初著書『クリエイティブジャンプ』が話題のホテルプロデューサー龍崎翔子さんと、『きみのお金は誰のため』がベストセラー躍進中の元ゴールドマン・サックスのトレーダー、社会的金融教育家の田内学さんの初対談が実現。起業、お金、社会の未来について語り合った。

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©AFLO

経営者としてめちゃくちゃ刺さった「お金の洞察」

龍崎 今日は、私が大変感銘を受けた本『きみのお金は誰のため』の著者・田内学さんをお招きして、お金と働くことについてじっくり考えていけたらと思います。

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田内 はじめまして。お声がけいただき、嬉しく思います。

龍崎 ご著書のメッセージが、いまの社会で働く若者として、会社の経営者としてめちゃくちゃ刺さったんですね。『きみのお金は誰のため』は、謎めいた大富豪のボスが中学生の優斗くんにお金の正体について解き明かしていく物語ですが、お金そのものには価値がなく、その向こう側で働く人がいるからこそ価値が生まれることや、未来への贈与をうながすのがお金の本質だ、という視点がすごく腑に落ちました。

 日々、税金がどうとか、減価償却がどうとか、利回りがどうとかばかりで、そもそもお金って何だろうと考える機会がこれまで多くありましたから。

田内 龍崎さんは東大経済学部で学ばれたんですよね?

龍崎 はい、田内さんの後輩です。会計の授業の一番最初の内容が「のれんの償却」から始まったんですよ。いったい何の話だろう、といきなり置いてけぼりになってしまい、あまり身になりませんでしたね(笑)。

 世の中にある資源をみんなが奪い合うなかで、格差社会を生きる私たちは、どうやって事業を通じて再分配していけるんだろうか? とか考えてきた中で、著書で触れられていた、「みんなの抱える問題を解決し」格差を縮めるサービスの提供によって結果的に大きな富を得た例など、とても現代的で刺激的でした。まさに私が10代の時に知っておきたかった、お金をめぐる洞察が詰まった一冊でした。

龍崎翔子氏(左)と田内学氏(右) 撮影・三宅史郎(文藝春秋)

田内 ありがとうございます。実は『クリエイティブジャンプ』を読んだあと、これはどんな人が書いたのだろう?ってもう一度プロフィールの年齢を確認したんですよ。なんと1996年生まれ。この人はいま何回目の人生なのかなと思ったほど、非常に世の中への観察力があって思慮深い本でした。とにかく自問自答していますよね、前世が禅のお坊さんだったのかなっていうくらいに(笑)。

龍崎 アハハハ……、確かに!

田内 ホテルとは何かとか、無意識を言語化するとか、なかなかそれって実務で実践できることではないし、恐らくホテル経営の中でたくさんの問題にぶつかって、どう解決していくかを徹底的に考え抜いてきた結果だと思いました。