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「俺、コンドームダメなんだよね」

 安藤は一見して紳士的で穏やかで、女性にとって魅力的に映る存在である。しかし性行為の際には「俺、コンドームダメなんだよね」「大丈夫、外に出すから」と、妊娠や性病のリスクに晒される女性のことなど考えず、身勝手な射精をくりかえす。

 

 安藤のこの「女にしか見せない一面」からもわかる通り、彼にとっては女性の人権よりも、己の快楽の方が圧倒的に優先順位が高いのだ。セックスは必ずしも射精しなくてはならないものではない。女性の体に配慮するのであれば、コンドームをしなくて良い理由など何ひとつないはずなのだから。

 この作品は責任逃れをする「男性の身軽さ」と、それに対照的な「女性の不自由さ」を繊細に描いていると思う。無責任な射精のあと、逃げた男性の人生は何も変わらないが、逃げられた女性と生まれてくる子どもの人生は大きく変わる。恐ろしいのは、逃げた男性にはお咎めが一切ないことだ。女性や子どもが困窮した生活を送っていても、彼らは誰からも罰せられることはない。なんて理不尽な世界だ、と思う。

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「安藤」は至るところに無数に存在する。だからこそ、私たちはこの漫画を読んで「リアルだ」と感じ、彼に怒りを覚えるのである。それは私たちが抱えているこの理不尽な社会への怒りそのものであり、人々の感情に強く訴えかける本作は、もはやこの上ない「問題提起作」とも言える。