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 2017年2月には、マレーシアの空港で金正日総書記の長男、金正男氏が猛毒の神経作用剤VXを顔面に塗りつけられて暗殺された。別の情報筋によれば、このVXはバイナリー・ウエポン(二種混合型化学兵器)で、神経剤になる前段階の2種類の化学物質を使用直前に混ぜて使ったとみられている。

 北朝鮮は最初の化学兵器を1980年代に、VXなど神経作用剤は90年代に、それぞれ生産を始めた。韓国国防省などによれば、VXや青酸カリなど約25種類、計2500~5000トンを貯蔵している。2000年代に入ると、軍偵察総局に毒劇物による暗殺工作を専門に行う19課を編成。19課は2010年に、黄長燁(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記の暗殺も狙ったとみられている。

 北朝鮮が核・ミサイルを保有したり、借金を踏み倒したり、ハニートラップや暗殺などに手を染めたりするのは、国際社会に受け入れられない異常な独裁体制を敷いているからだ。独裁体制は国内で過酷な人権侵害を生み、国外では様々な条約違反や衝突を生む。北朝鮮がプーチン大統領を大歓迎したのは、少しでも国際的な孤立状態を緩和し、北朝鮮国内での金正恩氏の偶像化にも利用できると考えたからだ。

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熱い握手を交わしていたが…

 北朝鮮の人々は昔から、ロシア人を「マウチプサラム(馬牛家人=大男総身に知恵が回りかね、の意)」と呼び、バカにしてきた。もっとも、それはプーチン大統領も同じだろう。2019年4月に金正恩氏がロシアを初めて訪れた際、迎賓施設を利用せず、ウラジオストク駅の広場で歓迎式典を行うなど、あからさまに冷遇した。

 複数の日本政府関係者や関係者の1人は「日米のような自由や民主主義といった同じ価値観があるわけでもない。利用価値がなくなれば、すぐに壊れるのがロシアと北朝鮮の関係だ」と語った。