「これまでも楽天の監督ではデーブ(大久保博元氏)、平石(洋介氏=現西武コーチ)、三木(肇氏=現楽天2軍監督)など意外な人選がありました。それでも強いコネがあったり、知名度は低くても指導力を見込まれたりとそれなりの根拠はありました。ただ、今江監督に関してはタイミングとしか言いようがない。選手と年齢が近くいい関係を保ってはいましたが、最大の理由は年俸が安くて済むからというのが本当のところでしょう。それで交流戦優勝ですから本当にコスパがいい人選になりました(笑)」
今江監督の今季の年俸は4000万円と推定されているが、実際は3000万円程度ではないかという人もいる。巨人の阿部慎之助監督は1億5000万円と言われているので、4分の1から5分の1ということになる。親会社の楽天が携帯電話事業の不振で経営難に陥る中で、コストカットを余儀なくされた球団事情も今江監督誕生の遠因になった。
ここへきて一気に評価が高まってはいるものの、選手時代から決してリーダーとしての評価は高くなかった。2012年にロッテでキャプテンに指名されたが、伊東勤監督に交代した翌年にはお役御免となっている。
「鈴木大地の方が人望もありましたから」
前出のロッテ時代のコーチはこう回顧する。
「今江はもともと主将タイプではありません。しっかりルーティンをこなして試合に臨む準備ぶりはさすがPL出身といったところですが、他の選手を引っ張るキャプテンシーという意味では物足りないものがありました。14年から主将になった鈴木大地の方が人望もありましたから」
それでも交流戦初優勝の裏には、不調の浅村栄斗を4番から下ろして、鈴木大地を据えた“非情采配”の影響もあった。鈴木は本来4番タイプではないが、後続にチャンスをお膳立てする役目を託した策は、今江監督のロッテ時代の恩師・ボビー・バレンタイン流だ。今江監督は「ボビー・チルドレン」の中心人物の1人だ。
6月21日のリーグ戦再開時点で、楽天は勝率5割のパ・リーグ4位。
今江監督は「交流戦って小さな頂ですけども、しっかりシーズンが終わる頃に大きな頂の景色を皆さんにお見せできるように、またリセットして目の前の試合を戦っていきたい」と今季のチームスローガンの「いただき!」を交えて展望を語った。
誰にも期待されていなかったことも含めて、今江監督率いる楽天には不気味な印象が漂っている。台風の目になる可能性はいかほどか。