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警察は周辺の道路を通行止めにし、「近くにクマがいます。外に出ないでください」と近隣住民へ警戒を呼びかけた。

住宅内には捕獲用のわなが運び込まれ、ライフルを手にした猟友会のメンバーも入っていったものの、膠着(こうちゃく)状態が続いた。

 

近くにある小学校では児童の安全確保のため、急きょ保護者に直接児童を引き渡す対応が取られた。保護者からは一様に驚きや恐怖の声が聞かれた。

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事態が動き出したのは、目撃情報から約5時間が経過した午後3時を回ってからだった。

 

住宅街に2度、銃声が響き渡った。市によれば、クマは体長1m10cmの雌の成獣で「おりでの捕獲や麻酔銃での対応が困難」と判断され、銃を使って駆除したという。

クマが軽トラックに乗せられ運び出されると、現場周辺では「クマの危険性は排除されました。外に出ても大丈夫です」とアナウンスされ、住民たちからは安どの表情が見られた。

「保護」から「管理」へ 対応強化

今回、福井市の住宅街を騒然とさせたクマの出没について、野生動物の生態研究の国内第一人者である石川県立大・大井徹特任教授は「迷い込んでしまったとしか言えない」と話す。

現場近くのクマが生息する山地(赤丸)

クマが居座った現場となった住宅街の東側には足羽川、西側には日野川が流れていて、10km圏内にはクマが生息する山地がある。

 

「若い個体が新しく自分の生活場所を求めて活発に移動する時期なので、そういったクマが思いがけないところで目撃されることはこの時期よくある」と分析する。

こうした事態を受け、国や県にも動きが出始めている。
国は2024年4月にクマを「指定管理鳥獣」に指定した。これにより、各自治体はクマの捕獲や個体数調査などに国の交付金を使うことができる。

 

これを受けて県は、クマの扱いを「保護」から「管理」へとシフトし、個体数や生息地域をコントロールするため、国の調査に基づき、人里に近いエリアにクマがいることがわかれば駆除する方針だ。

 

県自然環境課の西垣正男さんは「これまでの保護計画では人に危害を加えるような場所に出てきたクマのみを捕獲してきたが、『管理』となることで、集落に出てくる前に、里の方に分け入ってクマを捕獲できるので大きな違いがある」と話す。

また、各市町でもクマ捕獲用おりの設置条件を「目撃」から「痕跡」に緩め、人への被害が出ないよう対策を強化している。

 

福井県がまとめた2024年度のクマ出没件数は6月16日時点で、すでに160件と、統計開始の2004年以来、過去最多のペースとなっていて、人的被害を防ぐための対策が急ピッチで進められている。

(福井テレビ)