昨年、クマが各地で大量出没したことは記憶に新しい。人身被害も相次ぎ、環境省の速報値によれば、クマによる被害件数は196件、被害人数は217人、死者は6人と、統計を取るようになってから過去最悪の件数を記録している。
そんな中、警察庁が改正を目指している銃刀法改正案の中身を巡り、獣害に悩む地域から反対の声が上がっている。問題になっているのは、ハーフライフル銃と呼ばれる銃の規制強化だ。新聞各紙でもこの問題は取り上げられているが、ハーフライフル銃とはなにか、そしてその規制は妥当なのか、といった観点からこの問題を掘り下げてみたい。
新人ハンターが射程の短い銃しか持てなくなる?
1月18日の毎日新聞Web版は次のように報じている。
警察庁が通常国会に提出を予定している銃刀法改正案のハーフライフル銃規制強化に対し、北海道猟友会や道内の野生動物関連団体が、相次いで反対を表明している。ハーフライフル銃は2023年5月に長野県で男女4人が殺害された事件の凶器だったとされ、改正案では猟銃を10年以上継続所持する人に許可する方針。
ハーフライフル銃について、「10年以上猟銃を継続所持している人に許可する方針」とあるが、そもそもの話、ハーフライフル銃は銃所持許可が降りたばかりの新人ハンターでも取得可能なことで普及したもので、この規制強化はその利点を全く損なうものになっている。これに獣害に悩む自治体や、駆除に携わる団体が大きく反発している。
このハーフライフル銃規制の動きに、北海道庁をはじめ、北海道のハンター団体北海道猟友会、世界自然遺産知床の環境保全や環境教育活動を行う知床財団といった官民の組織が反対を表明している。
現行の銃規制・狩猟制度では、第一種銃猟免許を取得すれば、ライフル銃か散弾銃、空気銃を使用した銃猟が可能になる。ところが、ライフル銃に関しては散弾銃を10年以上所持した実績がないと警察から所持許可が下りない。すると、新人ハンターは最低でも10年はライフル銃を持つことができず、散弾銃か空気銃を使わざるを得ない。