猟銃に用いられる弾丸には様々なものがあるが、猟友会の全国組織である大日本猟友会では、大型獣であるクマに対しては、ライフル銃では30口径級ライフル弾(カービン弾除く)、散弾銃ではスラッグ弾(小さな弾が複数入った散弾ではなく、単発の弾)を適用弾丸としている。つまり、クマ相手に散弾銃で使える弾は、スラッグ弾のみということになる。しかし、ここで大きな問題が生じる。満足な精度が期待出来る距離(有効射程)の問題だ。
ライフル銃の特徴は、銃身の内部にらせん状の溝(ライフリング)が刻まれており、射撃時にこの溝に弾丸が食い込んで回転することで、弾丸が安定して遠くまで飛ばすことができる。一方、散弾銃にはライフリングが刻まれておらず、弾丸が到達する距離は短くなる。つまり、ライフル銃は狩猟獣から離れて射撃できるのに対し、散弾銃ではずっと近づく必要がある。これは、相手がクマの場合は逆襲を受ける危険性が増大するし、シカの場合でも気付かれて逃げられる可能性が増える。
そのため、これまでライフル銃を持てないハンターが大型獣に対して使ってきたのが、ハーフライフル銃だった。これはライフルが銃刀法で「腔旋を有する部分が銃腔の長さの半分を超えるもの」と定義されていることから、ライフリングの長さを銃身の半分以下に抑えることでキャリアが10年未満のハンターでも使えるようにした銃だ。
散弾銃ではクマに50mから100mまで近づく必要がある
散弾銃がスラッグ弾を用いるのに対し、ハーフライフル銃ではサボットスラッグ弾を用いる。金属製の弾丸をサボット(サボ)と呼ばれる樹脂製のカバーで覆ったもので、サボットがライフリングに食い込み、中の弾丸と一緒に回転して安定を与えることで飛翔距離を伸ばすものだ。
散弾銃のスラッグ弾の有効射程はおよそ50mから100mなのに対し、ハーフライフル銃のサボットスラッグ弾の有効射程はおよそ100mから150mと飛躍的に伸びる。そのため、ライフル銃を持てない若手ハンターでも、大型獣を相手とした狩猟や駆除が可能になっていた。
しかし、ハーフライフル銃をライフル銃と同じ扱いにされてしまえば、若手ハンターが大型獣を狩るには大きな障害となることが目に見えている。このため、獣害に悩む自治体や駆除に関連する団体が反対しているのだ。