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安倍元総理の事件などが規制のきっかけになったと言われるが…

 今回のハーフライフル銃規制では、現行のライフル銃規制と同じく「事業に対する被害を防止するためライフル銃による獣類の捕獲を必要とする者」に対しては、所持を認める方針と伝えられている。

 しかし、害獣が市街地に出没する度に駆り出される猟友会員の多くはこれに該当しない。ライフル銃所持のベテランが出られなかったら、害獣と接近するリスクを猟友会のハンターが丸抱えすることになる。また、若手ハンターが大型獣を狩る経験を積む機会を奪うことにもなる。

牛を襲い続けたOSO18の姿(標茶町提供)

 今回の警察の銃刀法改正案の背景には、2022年の安倍元総理銃撃や、2023年の長野県中野市での4人殺害事件といった、相次いだ銃による犯罪が挙げられている。しかし、安倍元総理の銃撃に使われたのは手製の散弾銃だ。中野市の事件ではハーフライフル銃が使われたが、被害女性2人は刺殺で、残り2人の警官は乗車中のところを運転席の窓から至近距離の発砲を受けて死亡したと報じられている。

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 ハーフライフル銃の利点である有効射程の長さと全く関係がなく、ただの散弾銃であっても近距離から撃たれたのなら結果は同じだったと思われる。つまり、今回の銃刀法改正案で、ハーフライフル銃を規制する理由としては不適当だろう。

 令和元年の年齢別狩猟免状交付状況によれば、全狩猟免許交付者のうち7割以上は50歳以上が占めている。ハンターの高齢化が深刻な一方で、ただでさえ少ない若手ハンターは有効射程の短い散弾銃しか使えない。その状況でさらに害獣を駆除しろと言われても、ハンターのリスクが増すことは想像に難くない。

野生のヒグマ(知床半島) ©AFLO

 前述したように、今回の規制強化はその理由からして実態に即するものではない。害獣被害が多発する現状に逆行するようなもので、再考を求めたい。