福井県内では統計開始以来、最多のペースでクマの目撃情報が相次いでいる。人身への被害は発生していないものの、住宅街での出没で“あわや”という場面もあり警戒感が高まっている。県はクマの扱いを「保護」から「管理」へとシフトし、対策を強化する。

10分にらみ合い…不安は消えず

緑に囲まれた越前市文室町。付近でクマの目撃情報が相次ぐ中、6月9日午後4時半ごろ、民家の庭に体長80cmほどのクマが現れた。

このクマを目撃したのは、山本義實さん。洗濯物を入れようと思っていたところ、庭先にクマがいるのを発見し、隣に住む息子に助けを求めた。

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「自分1人ではどうにもならないと思った。クマを見たことがないし、遭遇したことがないのでびっくりした」と山本さんは当時を振り返る。

茂みの中で夢中で草を食べていたクマがこちらに気付き、にらみ合うこと10分。警察官が駆け付けたあとも周辺で草などを食べ続け、約1時間後にようやくその場を後にした。

 

この出来事から1週間以上がたってもクマに遭遇する不安は消えず、山本さんは首から笛をぶら下げていた。「玄関に出るのも怖い。洗濯物を取りに行く時も必ず笛を吹いて、しばらく様子を見てから、洗濯物を取り込む」という対策していると話す。

緊迫の住宅街「外に出ないで!」

越前市から30km以上離れた福井市中心部の住宅街でも、クマが現れ騒然となった。

6月18日午前10時20分ごろ、福井駅から南に2kmほどの福井市花堂東1丁目の住宅街で、「道路をクマが横切るのを見た」との住民からの目撃情報が複数、市や警察に寄せられた。

 

その後、クマは1軒の民家に侵入した。住民が「ガチャン」とガラスが割れる音を聞いていて、玄関脇のガラスを割って家に侵入したとみられる。住民は一旦、家の奥に避難し、玄関とは違う場所から外に逃げ出して無事だったものの、現場周辺は一気に緊迫感が増した。

通報から約1時間後、警察官や猟友会が現場に到着し、部屋の隅でじっとしているクマの姿を確認した。窓付近で物音がすると、こちらに向かって動き回る様子もあり、再び窓を割って外に脱出する恐れもあるため、板で窓を塞ぐなどの対応が取られた。