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「殴られたんか? 口から血い出てるやないか」
「先生、人数がちゃいますもん。あいつら大勢で卑怯やねん」
「なんや、やられっぱなしか? 尻尾巻いて帰ってくんな!」
教室の窓ガラスを割った犯人は特定できず
数日後、学校の理事長室。
「そうですか。机と、駅でのケンカですか」
私は校長からの報告を受けていました。
開校から数カ月、こんな報告には慣れっこになり、もう驚くこともありません。
「机を投げたのは、先週のトイレットペーパーの子と一緒ですか?」
「ああ、いましたな。トイレットペーパーを廊下でまき散らしていた子らが。あれとはまた別の生徒ですね」
「ほんなら、以前、教室の窓ガラスを割った子かな?」
「ああ、そうです、そうです。でも、窓ガラスを割ったのはほかにもいますから。それと最近、通学路の工事をしている業者から苦情が来まして。なんでも塗りたてのコンクリートに足あとをつけた奴がいると。たぶん、うちの生徒のイタズラに違いないから、犯人を突き止めてくれと言うてます」
「誰の仕業か分かったんかな?」
「いえ、それがまだ。ケンカなら、おおよその見当はつくんですがね」
「……そうですか」
教員たちの前では平静を装っていたものの、こうした報告を聞くたびに、私は心のなかでいつもつぶやいていました。
「こんなはずではなかった……」
40歳で「地元・奈良県に高校をつくろう」と思い立ち、3年間、準備を進めてきたなかで、私の頭のなかでは理想の高校がはっきりと形づくられていました。その理想とは、一言で表すなら「日本一の高校」です。