奈良県にある私立中高一貫校の西大和学園。今や、東大、京大合格者数で全国トップレベルの進学校だが、わずか30年前までは無名私立高校だったという。西大和学園はいかにして共学トップの進学校になったのだろうか?
ここでは、西大和学園の創設者で、学園の会長でもある田野瀬良太郎氏の著書『なぜ田舎の無名高校が東大、京大合格トップ進学校になれたのか 西大和学園の躍進』(主婦の友社)より一部を抜粋。西大和学園の“荒れていた時代”を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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教室の窓から机を落とす生徒
ダーンッ!
すさまじい音で授業が中断された。職員室にいた先生たちが窓辺に駆け寄り、身を乗り出して地面を覗き込む。
「机ですよ、机! 机が落ちてる」
「また、あいつらか」
何か気に入らないことでもあったのか、それとも仲間同士でふざけ合っているうちに勢い余ったか、生徒が教室の窓から机を放り出したのだ。
「ちょっと行ってきますわ」
椅子の脇に立てかけてあった竹刀を手に取り、体育教師が階段をどしどしと駆け上がっていく。
“現場”にたどり着くやいなや、授業中でもおかまいなくドアを乱暴に開け、
「誰や」
絵に描いたようなこわもて体育教師のすごみを効かせた一言に、生徒たちの大騒ぎがピタリと止まる。
「お前か? ちょっと廊下に出えや」
「先生、すんません。ちょっと手がすべっただけですわ」
「お前、この前もやったろ? 2回も偶然手がすべることあるか! ケガ人でも出たらどうすんねん!」
怒号が、まだ1期生だけで空き教室の多い、がらんとした校舎に響き渡った。