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「他校の生徒とケンカしてるそうですわ」駅前で揉め事が発生
放課後になっても、職員室の空気はどこか落ちつかない。
「今日こそ何も起こりませんように」
教員たちは心で祈りながら教材研究や部活の準備を粛々と進めるが、その祈りはたいてい一本の電話でかなわぬものとなる。
「嶋田先生、すんません。王寺駅まで急いで行ってもらえますか? 今、駅員さんから電話がありまして、うちの子らが他校の生徒とケンカしてるそうですわ」
「またか。かなわんな」
もめごとが起こり、“力わざ”が必要なときは、たいてい体育教師で生活指導部長でもある嶋田先生が駆り出されることになる。
西大和の丘の上にある学校からJR大和路線王寺駅までは、なだらかな坂を下って徒歩20分弱。クルマなら10分とかからない。急ぎクルマを走らせ王寺駅に到着すると、制服同士がまだもみあっている。
「お前ら、ええ加減にせんかい!」
襟首をつかんで強引に引きはがし、押さえつけた頭を駅員に向けて下げさせる。
「えらいご迷惑おかけしました」
「いくら新しい学校いうても、こういう指導は徹底してもらわんと。おたくの学校、そりゃまあエラい“評判”になってますよ」
「はい、よく言って聞かせますんで」
平謝りに謝り、生徒を追い立てるようにして駅を出る。