「ゲームセンターから押収した商品について、著作権協会を通じて『鬼滅の刃』の権利者に確認してもらったんですけど、許諾していないという回答が得られたので」(捜査員)
「ない? 許諾ない?」(石川警部)
「模倣品の可能性が濃厚になりましたね」(捜査員)
ここで、「著作権協会」からの回答の映像が差し込まれる。
「両社とも許諾していない旨の確認が取れています」「権限外での商品販売と言うことで間違いありません」などという文字を読みとることができる。
石川警部と他の捜査員たちは打ち合わせをしている。
「許諾がなきゃ、商標法と著作権法と(関連法は)あるんですけども、不正競争(防止法)で行きますか」(石川警部)
特に「鬼滅の刃」に登場する市松模様などは日本古来の柄・デザインであるため著作権法での摘発は難しいと判断して、不正競争防止法での摘発を考えたとナレーションで説明している。
「権利も取って正規の商品として流通させるべきモノを流行りに乗っかって、同じモノをコピー作って、何の努力もなく流通させてしまう。許すべき行為ではないと思います」(石川警部)
問題は「再現」テロップの有無ではない
こうした捜査本部内の警察官同士の会話が映像になることは極めて珍しい。容疑者がクロなのかシロなのかを協議する、警察の捜査のデリケートな場面に部外者であるテレビマンがいてカメラを回すことは現実的には考えられない。
テレビ東京は、こうした捜査員同士の会話は、摘発の後で捜査員たちに演じてもらった「再現」だと説明している。社長らの謝罪会見では本来であれば「再現」とテロップをつけるべきだったのにつけなかったことが問題だったと言っていた。
だが、考えてみてほしい。通常テレビのドキュメンタリー番組や報道番組でどうしても撮影することが困難で「再現」に頼らざるを得ない場合がある。その現場にカメラが入ることがどうしても不可能なケースで、しかし映像でその場面を再現して表現する方がわかりやすい場合だ。
典型的なのは政治家同士の密室でのやりとり。たとえば今なら岸田首相と麻生自民党副総裁の会談の様子などがありうるだろうか。今後の政局を決めるような重要な会談について、報道番組で記者たちが集めた綿密な情報を元にして「再現」していく。
でも、それは俳優など、その当人ではない「別の人」が演じるというのが通常の再現方法だ。こうした場面で岸田首相や麻生氏が自分で演じる姿を想像してみよう。当の本人が演じるケースはかえって不自然でウソくさくなってしまう。当の本人が演じることは何らかの意図があると考えられる。
このため、問題はテロップをつけなかったことではないと筆者は考える。この説明は詭弁ではないだろうか。かつて行った過去の行為を担当する警察幹部に演じさせたにもかかわらず、「再現」というテロップをつけなかったのは実はつけるとかえって不自然になるから、番組制作側が意図的につけなかったと考える方が自然だろう。つまり、再現の映像なのに再現であることを隠してリアルなものだとして放送しようとしていたのではないかと思われる。