3月18日から20日にかけて、BBCワールドニュースで計4回放送された「Predator : The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 ~秘められたスキャンダル)」。

 調査報道に定評がある“世界のBBC(イギリスの公共放送)”が、日本の地上波ではけっして放送されないジャニーズ事務所の性虐待スキャンダルに迫ったドキュメンタリーだ。1999年の「週刊文春」の報道の後追いであることを隠さず、文春側の協力も得ながら性虐待・性暴力の実態を検証している。

BBCは放送可能なジャニー喜多川氏の顔写真を入手できなかったため、番組内ではイラストで代用されていた 「J-POPの捕食者 ~秘められたスキャンダル」(BBC World News)より

BBCが直接元少年を取材して追求した“真実”

 30年近く前にジャニーズ事務所に所属していた男性(仮名・ハヤシ氏)は、これまでメディアに話さなかった性虐待の経験を初めてBBCに語った。

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 ハヤシ氏がジャニーズ事務所に入った当時は15歳。オーディションでは最初から最後までジャニー喜多川氏が一人で相手をしたという。最初は「すごくやさしい」印象だった。オーディションに合格して、“合宿所”と呼ばれるジャニー氏の自宅で寝起きするようになったハヤシ氏。合宿生活が落ち着いた頃にそれは起きた。

ハヤシ氏 ジャニー氏から「お風呂に入っておいでよ」と言われて、「わかりました」と言ってお風呂場に行くと、テレビやテレビゲームもある風呂場でジャニー氏がお風呂に入れてくれました。すごい親切だなと思っていたら、上着を脱がしてくれた。そこまではまだ「親切だな」と思っていたところ、ズボンに手を入れてきて「自分で脱げます」と言った時に無言だった。それがすごい恐怖心で……。そのまま何もできず……。ズボンも脱がされてパンツも脱がされ、靴下脱がされ、全身を洗われて、お人形さんみたいに……。

 

記者 15歳で? それは性的な行為だと感じましたか?

 

ハヤシ氏 みんなの前で「お風呂に入るよ」と言われている時から、もうみんなはもう気づいていて、で戻ってきたときにはたぶん、顔が……(無言)。ちょっとごめんなさい。

 ハヤシ氏はメガネをかけていてマスクをして顔を隠しているが、人物を特定されないようにという意図で、目元のアップサイズを多く撮影し顔かたちは明確にわからない。それでも性虐待された時の詳細に話が及んだ時に眉間に深いしわが浮かび、息づかいが荒くなり、それ以上話せなくなってしまった。

言葉を詰まらせながら証言するハヤシ氏 「J-POPの捕食者 ~秘められたスキャンダル」(BBC World News)より

性暴力被害の訴えを否定しなかったジャニー氏

 ハヤシ氏は年の頃、40代なかばくらいだろうか。たびたび絶句し、沈黙が混じった。映像からハヤシ氏の苦悶が静かに伝わってきた。「明るくなるまでされていた」という言葉に、早く時間が過ぎないかと耐え続けていた人の状況がわかる。深刻な表情から心の傷が現在も癒えていないことも。

 ちゃんとした大人が涙を流し、身体を震わせたりするほど性虐待の心の傷が深刻であることが伝わってくるインタビューだった。

 他にも10人単位で被害が広がっていることを確認している。現在の感覚であれば、多数の子どもたちが被害にあった「性犯罪」と評価すべき事案だと思う。