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そして2017年11月、上原氏は小川氏ら支援者とともに国立市役所を訪問し、全国5000人からカンパを募って集めた資金で返済を終え、長きにわたった「国立マンション景観訴訟」は終結した。この時に返済金を手渡した相手が、当選したばかりの永見市長だ。

こんな「因縁」があるからこそ議会での責任追及になったわけだが、もしここで「グランドメゾン国立富士見通り」が解体されなかった場合はどうなっていたか想像していただきたい。

もし「富士山が見えなくなった」「日当たりが悪い」と景観を巡って市民が提訴をしたり、国立市の取り組み不足が槍玉に挙げられるようになっていたら、半年後に行なわれる市長選の大きな争点になっていた可能性は高いのではないか。

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しかも、今回の選挙は「上原イズム」を継承する人々にとって負けられない戦いだ。

国立市政を自公候補から奪還する戦い

上原氏の後継となった関口博氏は1期務めた後、2011年に自公などが推薦した佐藤一夫氏に敗れる。2期目の任期途中に佐藤氏が病気で亡くなった後は、同じく自公推薦の永見氏に上原氏の愛弟子ともいう小川議員が敗退し、現在に至っている。

「上原イズム」を継承する市民にとって、国立市政を自公候補から奪還するというのは悲願なのだ。そんな中で、「上原イズム」を世に広めるきっかけとなったマンション景観問題が起きる。永見市政を攻撃して、国立市のリベラル・反自公勢力を集結させる旗印として、これほどうってつけのテーマはないではないか。

もし筆者がそれを仕掛ける側ならば、間違いなく「グランドメゾン国立富士見通り」を活用する。積水ハウスと国立市を訴えることで、市民に対して永見市政の開発優先という問題を「見える化」するのだ。

積水ハウスはどこかのタイミングで、このような水面下の動きを察知したのではないか。このままいけばあのマンションは政争の具にされる。これから何年にも及ぶ訴訟や政治闘争によって不動産価値も大きく毀損される恐れがあるし、何よりも入居者や契約者のケアなど面倒なことが山積していく。やめるなら今しかない――。そんなギリギリの判断だったのではないか。