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国立市は「景観問題のメッカ」

では、積水ハウス幹部は具体的にはどんな「泥沼」を恐れたのかというと、大きくは以下のような3つのシナリオが考えられる。

① 「市民」が国立市や積水ハウスを訴えて、マンション販売に悪影響がでる
② 入居者が「契約時に聞いていた話と違う」と積水ハウスに返金を求める
③ 12月15日投開票の国立市長選の「争点」にされて、さらに不動産価値が落ちる

まず、①に関しては、メディアでもたくさん報道されているのでご存じの方も多いだろうが、東京・国立市というのは、これまでさまざまなマンション訴訟がおこなわれてきた「景観問題のメッカ」だ。

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つまり、マンション訴訟慣れした市民がたくさんいらっしゃるので、日照権やらでいかようにも積水ハウスを法廷に引きずり出すことができる。もちろん、そこには国立市と、市長の永見理夫氏も含まれる。

「係争中」のマイホームを欲しがる人はいない

国立市景観づくり基本計画」は今回の景観問題の舞台となった「富士見通り」について、このように明記されている。

《富士見通り沿道では、周辺のまちなみに調和した配置や形態意匠、色彩とし、低層部には店舗が並び、回遊性が高くにぎわいのある景観づくりを誘導します。また、富士山への眺望を確保するため、周辺の建築物が富士山への眺望を阻害しないよう取り組みます》

もちろん、あくまで「基本計画」なので法的強制力のある話ではないが、市の「取り組みます」というのが嘘八百じゃないかという攻撃材料にはできる。「市民」の中には、勝つ負けるより市政の問題点を追及することに意味があると考える人もいらっしゃるのだ。

さてそこで、国立市でマンション購入を検討している人になって想像をしていただきたい。こういうギスギスした争いの場になっているマンションを8000万円で購入したいと思うだろうか。よほど度胸のある人ではないとなかなか「えいや」と契約書に実印を押すことはできないのではないか。