2022年4月に導入が開始された「リフィル処方箋」。しかし、患者側から見たメリットの高さに比して、存在は幅広く認知されているようには思えない。日本の社会や経済問題について研究を重ねてきた有志のグループ「憂国グループ2040」は、その理由を考察する。

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リフィルってなんだ?

 改めて読者の方々に問いたい。リフィル処方箋という言葉を聞いたことがあるか。聞いたことがあるとして、その意味を本当に理解しているか。

 実は、この質問は、既に昨年、厚労省が発している。令和5年度の調査で、我々と同じ50代は、「制度の内容まで知っていた」という人が32.4%、「名称だけ知っていた」が19.7%となっている。合わせると50%を超える。しかし我々は、この結果には懐疑的だ。

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(写真はイメージ) ©hika_chan/イメージマート

 既述のとおり、我々は半分以上が名前すら知らなかった。制度の内容まで知っていたと言えるのは、本稿執筆のきっかけを作った1人だけだ。もし本当に半数以上の人がリフィルの意義を知っているなら、医者にかかる機会も増える中高年世代が、現状に満足しているはずがない。実際には、誰もこの便利な方法を認識していないのだ。では、もったいぶらず、話を進めよう。

 我々がリフィルに最適だと考えている事例を二つ挙げる。まず、今や国民病とも言える花粉症だ。我々のメンバーも約8割が、この春、花粉症の薬を服用していた。ドラッグストアでも一般薬なら買えるが、ほとんどのメンバーが医療機関を受診した。しかし医療機関では、「昨年と同じ花粉症の薬をもらいにきた」と伝えただけ。だいたいの医師も、「はい、じゃあ出しておきますね」と言うだけで、それ以上のやりとりはない。まさに典型的な“3分診療”だ。医師に相談する必要なんてあるのだろうか。

 もう一つの事例は、50代の中高年世代に“あるある”の痛風だ。痛風発作は尿酸値が高い人に起こる。したがって、尿酸値が上がらないように心がけるか、尿酸値を下げる薬を飲み続ける必要がある。この薬はドラッグストアでは買えないため、医療機関に行かなければならない。その時の医師とのやりとりは花粉症の時と全く同じだ。「はい、じゃあいつものを出しておきますね」。

 二つの具体例を出したが、他にもこういう受診のケースは多い。忙しい勤労世代にとっては、時間がもったいない。花粉症のように、毎年同じ時期に、同じ原因で、同じ症状が出るのであれば、患者自身の判断で同じ薬を服用すれば事足りる。命にかかわることもないし、改めて薬のことが知りたければ薬局で話を聞けば十分だ。医師の判断を聞くまでもない。

 現時点では、こうしたケースで薬をもらう選択肢は医療機関にかかる以外にない。少なくとも、我々はそう思い込んでいた。

 しかし、本当は他に選択肢があるのだ。それがリフィルである。医師の診断を受けずとも、一定期間、使うことのできる処方箋のことだ。米国では、薬局で薬のボトルをいっぱいに戻す(リ・フィル)ことからそう呼ぶそうだ。そして日本でも、同じことができる制度が存在している。だからこそ岸田首相の指示は、その“普及策”を考えろ、だったのだ。