1ページ目から読む
2/2ページ目

 Bさんが死亡すると、松永は緒方の母親に仕送りをさせ生活していた。が、その金額が1千500万円を超えたところで限界に達する。それでも、執拗に金を要求され虐待を受けていた緒方は1997年4月に突如、行方をくらます。自分で働き送金しようと、由布院温泉(大分県)のスナックに勤めることにしたのだ。

 しかし、行き先を告げぬまま逃亡した緒方に松永は怒り狂い、彼女の両親に娘が殺人に関与していることを告げると同時に、家族から殺人犯が出ることの世間体の悪さを説き、緒方の父親(死亡時61歳)と母親(同58歳)、妹(同33歳)を北九州市内のマンションに呼び出す。そこで、自身の死亡を偽り、緒方をおびき寄せることへの協力を強要。ほどなく、子供のことが心配で電話をかけてきた緒方に松永が自殺したと嘘をつかせ、驚いた彼女が葬儀に駆けつけたところで、松永に命令されていた家族が緒方を取り押さえた。

凶悪すぎるマインド・コントロール手法

 松永は殺人犯である緒方を匿うという名目で家族に毎月多額の金銭を要求、それが目標額に達しなかった場合は、彼らに容赦なく通電の罰を与えた。こうして、身内が殺人に加担した後ろめたさを持っていた家族は数千万円を奪われ、否応無しに松永の支配下に置かれる。

ADVERTISEMENT

内縁の妻であった緒方純子受刑者(1983年撮影/写真提供:小野一光)

 一方、松永は緒方の妹の夫(同38歳)には彼が元警察官だったこともあり、当初一定の距離を置いていた。が、ほどなく「あなたの妻は隠れて浮気している。俺はあなたの味方だ」と嘘をつき、疑心暗鬼にさせたうえで、夫の警戒心を解く。すっかり信頼させたところで夫から家族への不満を聞き出し、両親と妻に暴力を振るうよう指示。同時に、Bさんの遺体解体現場である風呂場のタイルの張替え作業を行わせ、元警察官の立場にありながら殺害の証拠隠滅に加担したと責め立て、彼をも支配下に置くことに成功する。さらには、緒方の母親、妹と強引に肉体関係を結び、そのことを家族に公表して夫婦・親子間を分断させた。