裁判所は松永太を「善悪のたがが外れた首謀者」、緒方純子を「愚直な実行者」と位置づけ……。罪のない人々7名が残酷な手口によって殺害された「北九州監禁殺人事件」。その後、裁判所が犯人男女に下した罰とは? 新刊『世界の殺人カップル』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

善悪のたがが外れた首謀者・松永太、愚直な実行者・緒方純子に下された罰は…(写真は2人のアルバムより/写真提供:小野一光)

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「善悪のたがが外れた首謀者」と「愚直な実行者」

 殺人、傷害致死、監禁致傷、詐欺、強盗の罪で起訴された松永と緒方の裁判は、2002年6月から福岡地裁小倉支部で始まった。遺体など有力な証拠は皆無だったが、検察はA子さんや緒方の供述に真実性があるとして、松永を「善悪のたがが外れた首謀者」、緒方を「愚直な実行者」と位置づけ、一連の事件は被害者に虐待や生活制限を加えて支配し、金づるとしての利用価値がなくなると口封じのため殺害を繰り返した計画的犯行と指摘。

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「被害者に家族の殺害、死体処理を手伝わせた挙げ句に殺害するという鬼畜の所業」と指弾した。緒方が「松永の指示がなければ殺さなかった」と供述している点については「2人は車の両輪のような関係。松永の指示に忠実でなければ、これほどの大量殺人を遂行し得たかは疑問。刑事責任は松永に劣らず重い」として、共同正犯の成立を主張した。

 対して緒方は自身の父と、A子さんの父(Bさん)については傷害致死罪の適用を主張したが、その他については起訴事実を大筋で認めており、改めて一連の犯行は松永の主導と主張。事件の全容解明に貢献したとして情状面から死刑回避を求めた。一方、松永は緒方の父については一部関与を認めたうえで傷害致死罪を主張。Bさんに関しては「浴室で転んで頭を打った事故死」。緒方家の他の5人は「家庭内の不和などが原因で、一家で殺害し合った」として無罪を訴えた。