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安倍昭恵さん「私自身、犯罪被害者遺族」

 6月25日、映画の特別試写会が東京・有楽町で開かれた。ひときわ目を引いたのは安倍昭恵さんだ。草刈さんたちの取り組みを表彰した社会貢献支援財団の会長。そして夫の安倍晋三元首相を殺害された遺族でもある。

「草刈さんも皆さんも、裏切られても裏切られても諦めずに更生を見守る姿というのは本当に社会にとってありがたいプロジェクトだと思います。

 私自身、犯罪被害者遺族という当事者になってしまったので、この映画は他人事ではないと思いながら涙が止まりませんでした。再犯を防ぐために何か私ができることをやりたいと思って、先日は岡山の刑務所に行かせていただいたところでございます」

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©相澤冬樹

 この後の質疑で私は昭恵さんに質問した。

――重罪犯の多い岡山刑務所を訪れたということですが、その時、昭恵さんが安倍元首相の殺害犯を許すという話をされたと報道で見ました。それはどういう心境でしょうか?

「裁判が始まる前に許す許さないという話をするわけにはいかないんですが、許せないとか憎むとか恨むとか、そういうネガティブな感情をなるべく自分の中に持ちたくないという、そんな思いです」

 一方、草刈さんは、スウェーデンの取り組みを視察してきた経験から、国からの支援の在り方について問題提起した。

「日本は今まで刑務所出して『はい終わり』です。でも後の方法論、世の中にすぐに順応できるような支援が必要です。今は参加企業だけでやっていることを、国家プロジェクトとしてやればいいのかなと最近思います」

個人の“善意”を地域全体、国全体で支える仕組みを

 この発言を聴きながら私は映画終盤の一場面を思い出した。プロジェクト10周年の会場に掲げられていた安倍元首相の言葉。

「再犯防止 立ち直りを支える地域の力」

 なるほど、だが地域の力って何だろう? 現状は、これだけ労力のかかる仕事を一部の経営者の厚意に頼っている。

 プロジェクトに参加する400社余りの中でも、実際に出所者を雇ったのは67社にとどまるという。一企業、一地域でできることには限りがある。草刈さんは「少年院と世間をつなぐ職業訓練場のような中間施設が必要だ」と訴える。

 法務省もいろいろ出所者支援策を打ち出していることは、私もNHK時代に取材して少しはわかっている。試写会でも当時お世話になった法務省の方に出会った。

 それでも、この映画は強く訴えかけてくるように感じる。国の関与と予算がもっと必要だと。草刈さんたち個人の“善意”を国全体で支える仕組みを築かなければならない。

 その役目は法務省に限らない。ここは政治の出番だ。多くの方に映画を観て考えていただきたい。再犯防止は私たちの安全に直結するのだから。

 

『おまえの親になったるで』
INTRODUCTION
 10年前、関西の中小企業7社が集まり、あるプロジェクトが発足した。元受刑者に住まいや仕事を提供し、再犯を防ぐ「日本財団職親プロジェクト」。受刑者の半分が出所しても仕事や居場所がなく、再び罪を犯すという社会問題に立ち上がったのだ。
 しかし、参加者の中にひとり複雑な思いを抱えた男がいた。大阪の建設会社・社長の草刈健太郎さんには、大切な妹を殺された悲しい過去があった。

STAFF
監督:北岸良枝/プロデューサー:山田龍也・花本憲一(テレビ大阪)/製作著作:テレビ大阪/配給:ニチホランド/95分/全国順次公開中