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〈警察の上から下まで…〉警視庁捜査一課“伝説の取調官”が指摘する「木原事件」と「鹿児島県警の不祥事」に共通するもの

サツイチの元警部補・佐藤誠氏(65)が衝撃の書『ホンボシ 木原事件と俺の捜査秘録』を執筆した3つの理由

2024/06/27

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 読書

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今注目される「事件指揮簿」と木原事件の関係性

 さらに、佐藤氏が「この件を事件性がないなんて言える警察官はあの2人(露木氏、国府田氏)以外、誰もいない」と断言する、もう1つの根拠があるという。

 それは、現在、鹿児島県警の情報漏洩事件で注目されている「事件指揮簿」の存在だ。鹿児島県警の事案では、現役警察官が盗撮で逮捕された事件で、前生活安全部長が県警本部長に、捜査を進めるための「事件指揮簿」に押印を求めたところ、身内の不祥事を隠ぺいするため、本部長がこれを拒否した疑いが持たれている。本部長はこれに対し、「本部長指揮簿が作られた事実は確認されていない」と主張している。

 この「事件指揮簿」が木原事件とどう関係するのか。佐藤氏が解説する。

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佐藤誠氏 ©文藝春秋

「事件指揮簿とは、下の者が『これはこういう事件だから着手してよろしいですか』と伺いを立て、上の者が『よろしいですよ』と印鑑を押すというもの。鹿児島県警の盗撮の件でも、生活安全部長が押す前に、現場の捜査主任官、管理官、理事官、参事官と、順々にみんなが、これは事件であるという認識を持って印鑑を押している。だから本部長がいくら『知らない』といっても、それを見ればすぐに、いつ誰が判を押したのか、捜査の流れが判るんです。

 殺人事件でも同じ。聴取でも家宅捜索でも、一課長、刑事部長までが、『これは事件性がありますよ。捜査を行っていいですよ』と判をついていきます。つまり印鑑を押した全員が、『これは殺人事件だ』と思ってやっていることになる。警察の上から下まで事件性があると思って印鑑をついているんですよ。それを長官があんなこと言ってるから、俺は頭に来たんです。昨年の会見ではそこまで言及しませんでしたが、裏にはそういうことがある。勝手な主観で『事件性がある』といっているわけではないんです。厳密なプロセスを無視して『事件性はない』なんていうのは非常に矛盾するし、あり得ない話なんです」

 こうしたことに対する憤りから、佐藤氏は、「全てを明らかにすべきだと思い、本に事実を記すことにした」という。

 そんな衝撃の書を巡っては、発売前からある動きが。現在、事件の捜査は検察の手中にあるが、同書が“提出”されたというのだ。種雄さんの次姉が明かす。

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