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町側は「予算がない」の繰り返し

 5月15日、山岸は15項目の「業務(案)」を持って町役場を訪れると、担当者に対して、町側の文書の問題点と、改善すべき点を説明したという。ところがーー。

「ひとつひとつ説明したんですけど、担当者は『(山岸らの)要求に叶えられそうなものはない』と。で、二言目には『予算がない』。日当を増額するには『条例変更しないといけないから難しい』。何を言っても、ラチが明かないんです」

食害されたデントコーン畑(藤本靖氏提供)

――予算はもう決まっているわけですか?

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「知り合いの町議に聞いたところ、鳥獣対策の予算は約110万円で、そこからヒグマやアライグマ捕獲用の罠の購入費を引いた残りが我々の日当に充てられる、と。これが年間15万円ほどだそうです。もし、ヒグマの緊急出動で我々が2人出ることになったら、日当8500円×2で1日1万7000円かかる。ということは、年間9日出動しただけで、15万円越えちゃうんです」

 ちなみに昨年、奈井江町では20件のヒグマの目撃情報があった。

「じゃあ予算を使い果たしたら、もうクマ追わないのか? こんな杜撰なプラン、民間企業だったら即却下ですよ。とにかく役場の対応を見て、こっちの提案に歩み寄るつもりはないな、と思った。それで翌日の夕方またみんなで集まって、『これ以上いくら話しても無駄だから、辞退しよう』ということを決めました」

 そして5月19日、山岸らは三本町長宛に以下のような文書を郵送する。

〈先般「鳥獣被害対策実施隊の業務について」参加要請を頂いた件について、部員全員にて協議した結果、当部会に於いて十分に町の要求にこたえるには、人員的にも難しいとの結論に至りました。よって、本件に関しては参加を辞退いたします。〉

 実は現在、奈井江部会には山岸を含めて会員は5人しかおらず、そのうち3人は70歳を越えている。しかも平日は皆それぞれに本業の仕事があるため、緊急出勤の度に所定の人数を確保するのは〈人員的にも難しい〉という事情があった。

写真はイメージ ©iStock.com

メディア向けの奈井江町の言い分

 山岸は要請を辞退することを、事前に北海道猟友会のしかるべき筋にも伝えていた。

「文書を送った翌日(5月20日)には、HTBからこの件で話を聞きたいと連絡があって、我々としては“もう終わった話”だったので、取材に応じたという次第です」

 そして5月21日の夕方に冒頭の第一報が報じられた。奈井江町側が山岸らの辞退の文書を確認したのは21日の朝だったというが、HTBの取材に対して、「猟友会と改めて話し合いをしたい」というコメントを出した。

 以後、この問題は各メディアで盛んに報じられたのだが、「メディア向けの奈井江町の言い分が噴飯モノでした」と山岸は言う。