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「例えばSTV(札幌テレビ)の取材に対して、町役場の担当者は『(4月1日付の)文書は“たたき台”であって、こういうことになってびっくりした』という趣旨のコメントをしています。でも彼らは文書をもってきたときに、“たたき台です”なんて一言も言ってない。それに文書の体裁を見れば分かるけど、これは明らかに決定稿なんですよ」

――仮に奈井江町側がこの文書を持ってくる前に、猟友会側との事前のすり合わせがあれば、ここまで揉めることはなかった?

「もちろん、そうです。僕らが一番怒っているのはそこなんです。駆除の現場を何も知らない人間が、突然“こう決まったから、従うように”と言ってきたから、それはおかしい、と言っている。だってこれじゃ、僕らは単なる役場の“下請け”ですよね」

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町長からの電話

――一連の報道が出た後で、奈井江町側から何かアプローチはあったんですか。

「担当課長が“話し合いのテーブルについてくれ”と言ってきましたが、こちらとしてはもう終わった話なので、“雑談なら応じるけど、実施隊の話はしないよ”と言いました。それからは何も言ってこないですね。かわりに町長から携帯に電話があって、やっぱり“話をしたい”というので、『まず町長ご自身が役場内で担当者に聞き取りをして、状況を確認してからでないと話が前に進まないのでは』と申しあげました」

牛を襲い続けたOSO18の姿(標茶町提供)

――奈井江町側としては、何とか穏便にコトを収めたかったという感じでしょうか?

「それは強く感じます。でもこれは『じゃあ、ちょっと報酬を上げればいいだろう』という水面下の交渉で決着すべき問題じゃないんです。今、駆除の現場で何が起きているのかという現実に向き合って、将来的に持続可能なヒグマ対策の在り方を探らないと解決しないと僕は思う。ところが、担当者も町長も、そのあたりの認識があまりに薄いように感じられたので、あえて突っぱねた面もあります」

「その条例をみせてくれ」「……ありません」

 実は山岸は一連の報道が出た後の5月27日にも町役場を訪ねている。

「そこでも、担当者がしきりに『条例を変えないと要求には応えられない。その時間はない』と繰り返すので、『じゃあ、その条例ってどんな条例なんだ? 見せてくれ』と言ったら、『……ありません』。呆れてモノが言えませんでした」

 実際には「奈井江町鳥獣対策実施隊設置条例」という該当する条例が平成25年に制定されている。

「それも、私が知り合いの町議に頼んで調べてもらって、初めて分かったんです。担当課の人間は誰も知らなかった。『条例が……』と言っておけば、こっちが黙ると思ったんでしょう。軽く見られたものです」