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「社長が耄碌しているから何をやってもいいと思ったんだろ」

武雄「いままでね、僕はあなたのことを信用しておった」

「私も会長を尊敬しています」

武雄「こういうふうにやっているのを見るとね、とんでもないと思った」

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「しかし、会長、それは」

武雄「言い訳するなというんだ! なぜこんなことをやるんだ!」

「これは、誰もおらないから、まず私がやるようにというご指示でございました」

武雄「社長(=武雄のこと)が耄碌(もうろく)しているから何をやってもいいと思ったんだろ」

「そんなこと私はゆめゆめありません。もし会長がそんなふうに思ったのなら」

武雄「もういいそれ。言い訳はいいから。ただ僕はあなたと喧嘩したくないの。だから今日を限りに辞めてちょうだい」

「わかりました。はい。わかりました。残念でございますが」

 車椅子に座るもののグループ総帥の威厳をなお失ってはいない武雄を前に、佃はただただ気圧(けお)された。途中で入室した昭夫は言葉少なにその様子を見守るばかりだった。

ロッテグループの創業者・重光武雄 ©時事通信

宏之解任劇の背後で蠢いていた人物

 佃は最後、「承知しました。長い間お世話になりました。ありがとうございました」と一礼し、そそくさと部屋を後にするほかなかった。

 張り詰めた空気が和らぐと、長女・英子が父・武雄に韓国語で耳打ちした。

「お父さん、李仁源(イ・インウォン)という人、知ってるでしょ、よく報告しにくるじゃないですか、あの人が元凶です。あの人が全部やっています。あの人も追い出さないと」

「前にお父さんが李仁源を解任しようとしたじゃないですか」

「(それを)昭夫が李仁源に教えた。それで、あれから、李仁源が昭夫にくっついて、いまのことを企んでいます」

 英子は宏之解任劇の背後で韓国ロッテの副会長、李仁源が蠢(うごめ)いていることを感じ取っていたようだ。先に述べた韓国側による権力奪取説である。