「借金で首が回らなくなった人の結末には、大きく分けて3つある。1つ目はなんとか努力して完済する人、2つ目が弁護士や特定調停を頼って債務整理や破産申立てをする人、そして…」。首が回らなくなった人の末路を、消費者金融業界で20年間働き続けた、加原井末路氏の新刊『消費者金融ずるずる日記』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

借金で首が回らなくなった人に残された「最後の選択肢」とは…。写真はイメージ ©getty

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借金で首が回らなくなった人の「3つの結末」

 借金で首が回らなくなった人の結末には、大きく分けて3つある。

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 1つ目はなんとか努力して完済する人、2つ目が弁護士や特定調停を頼って債務整理や破産申立てをする人、そして3つ目が逃げる人である。

 この日、私は午後から7件の集金業務が入っているハードスケジュール。

 1軒目、お宅に到着すると雑草ボウボウで、絵に描いたような債務者の家。インターホンを鳴らすも反応なし。玄関横が居間になっているようでそこを覗き込むと、誰かがコタツで横になっている。

「こんにちはー!」と声を張り上げるも、起きる様子がない。窓ガラスを叩くも反応なし。きっとほかの部屋に逃げ遅れたらしく、居間で「寝たふり作戦」のようだ。さすが熟練滞納者、われわれが部屋に上がり込むことまでしないのをよくわかって平然としている。そのとおりで、こうなると私はもうお手上げ。督促状をサッシ窓の隙間に入れて帰るしかない。

 ツイていない日というのはあるもので、この日はこのあとも立て続けに不在。

 日が暮れたのに1件も回収できぬまま、いよいよ最後の1軒となった。1日かけて回収ゼロでは、支店長に何を言われるかわからない。支店長の顔がちらつき、気が重くなる。

 最後の訪問先・小久保さんの借金総額は他社を含めて300万円超。まず減っていくことはないと考えられるラインだ。デックに対しては元金50万円の借入れがそのまま残り、2カ月以上延滞しているのにくわえて、まったく連絡もつかない。正確に言えば、連絡がつかないのではなく、自宅の電話も携帯も料金未納で止められているため、連絡の取りようがないのだ。こういうお客は日中の訪問より、仕事から帰ってくる時間帯のほうが会える確率は上がる。私は日もとっぷりと暮れたころ、小久保さん宅前へとクルマを走らせた。

 クルマから降り、まずは家全体を見渡す。敷地に入り、インターホンを押してみるが応答はない。というより人の気配が感じられない。郵便受けと一体型の玄関ポストには光熱費やその他の督促状と思われる請求書、チラシがギュウギュウ詰めに押し込まれている。

「こんばんは~!」と何度か大声で呼びかけるも応答もない。

「まさか、一家心中とかしてんじゃないだろうな」と良からぬ想像も頭をよぎる。