「1回も染めたこともないし、黒髪ロング以外の経験がないんです」――待ち合わせのときは、その“美しい髪”が目印になることも。髪専門のパーツモデルとして活躍する、宇佐見坂うさりさんのインタビューをお届け。知られざるそのお仕事内容とは? そして彼女の美髪が招いた「あるトラブル」とは…?(全2回の1回目/後編を読む

髪の毛専門のパーツモデルとして活躍する宇佐見坂うさりさんに話を聞いた ©橋本篤/文藝春秋

◆◆◆

「市販のシャンプーはほぼ使ったことがない」

──髪の毛のパーツモデルさんには初めてお会いしました。珍しいですよね。

ADVERTISEMENT

宇佐見坂うさり(以下、宇佐見坂) そうですね。確かに、普通のモデルに比べて人口が少ないと思います。以前は大手のパーツモデル専門事務所もありましたが、そういった事務所も近年廃業したり、さらに減ってしまったイメージがあります。

──意外とギャラが安いらしい、と聞いたことがあります。

宇佐見坂 あまり知られていないんですが、パーツモデルって、時給制であることが多いんです。なので、それだけで生活するのは結構難しくて。ほぼ皆さん兼業なんじゃないかなと思います。それでも手のモデルさんは例えばアクセサリーから食品、医薬品まで結構お仕事の幅があるんですけど、私のような髪のパーツモデルは仕事も限定されてしまうので。

──シャンプーのCMとかですか?

宇佐見坂 はい。シャンプーやトリートメントといったヘアケア用品のCMが中心です。あと私は美容雑誌さんなどにおすすめケア商品の紹介や美容コラムを書いて原稿料をいただいたりもしています。

──昔からずっとロングヘアだったそうですね。

宇佐見坂 そうです。生まれてこのかた黒髪ロングです(笑)。2、3歳からずっとかな。1回も染めたこともないし、黒髪ロング以外の経験がなくて。

──一度も変えたいとは思わなかったんですか?

宇佐見坂 なかったですね。祖母も母も髪の毛がとてもきれいで、代々続く黒髪ロング家系だったのもあって。特に疑問も持たず、母たちに言われるがままに伸ばしていました。周りの人からも長い髪を褒められることが多かったので、切る必要を感じなかったのも大きかったです。

──小さいころから髪をずっと褒められていたんですか?

宇佐見坂 そうかもしれません。人より伸びるのが早く、3歳ですでに腰まで伸びていたこともあって、物心ついたころから、いつも髪が話題になりがちでした。「すごく髪がきれいな子がいる」と学校内で噂になっていたり、旅先で出会う人にも言われたり。生まれてこのかた髪だけは、褒められなかったことがない、というくらいです。

 学生の頃って、何かと悩むことが沢山あると思うのですが、私にとって「みんなに必ず評価してもらえる」髪が、自分の心を支えてくれていたんだろうな、と思うこともあります。

──髪がご自身のアイデンティティなんですね。

宇佐見坂 そうとも言えますね。「髪が本体」と言っていいくらいです。友人と待ち合わせしても、みんな私の髪を目印にしているので、帽子をかぶって見えなくしちゃったら気づかれないこともあるくらいなので(笑)。アイデンティティなんだと思います。

──当時からヘアケアにこだわっていたんですか?

宇佐見坂 母が美容師やサロン経営者の友達が多かったので、幼いころからサロンで直接買ったシャンプーやトリートメントを使っていました。生まれてからずっとそういう環境で育ったので、いわゆる市販のシャンプーはほぼ使ったことがなかったです。

──すごい子ども……!