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院長のコメントに記者たちが「キョトン」とした理由
事務長の囲み取材後、病院の玄関前では、このまま帰るか、ここに残るか……記者たちが互いの動きを見合いながら立ち尽くしていた。企業や病院に関わる事件で、こんなふうに会見について何の予定も知らされずに待ちぼうけをくらうケースはあまりない。
30人近く集まった記者たちは玄関脇にしゃがんでノートパソコンを開いたり、そばをうろうろしたりして待っている。すると、囲み取材の打ち切りから4時間後の午後4時頃、事務職員から「前言撤回」の連絡が来た。
「やはり会見はしません。再度、玄関で取材を受けることにします」
またも事務長が現れ、「院長のコメントです」と告げて紙を見たまま顔を上げずに早口で読み上げる。
「このような事態を招くに至ったことは、誠に遺憾であり、患者様はじめ、ご家族様、地域の方々に深く謝罪するとともに、今後二度とこのようなことが起きないように、病院として全力を尽くす所存です。関係者も必要に応じ責任をとってもらうつもりです」
記者たちの多くがキョトンとしている。それもそうだろう。全国どこの不祥事でも使えそうな絞切り型のコメントだ。そのうえ、最後は院長自身には責任がないと言いたげな一文で締めくくっている。
「なぜ院長は出て来ないのか」と記者たちが尋ねても、
「院長からのコメントは今、発表した通りです」
と取りつく島もない。