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「すぐに離れて! ここに居てはダメ!!」死者の自宅に残された“黒い海”の正体は…清掃員歴12年男も慣れることのなかった「腐乱現場」のヤバさ

『ごみ屋敷ワンダーランド』より #3

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「中を覗くと、真っ黒な玄関に、真っ黒な廊下。床一面が、『黒』に埋め尽くされていた」…腐乱現場の清掃におもむいた、お笑い芸人の柴田賢佑氏。彼がそこで見た「黒い海」のヤバすぎる正体とは…。新刊『ごみ屋敷ワンダーランド ~清掃員が出会ったワケあり住人たち~』(白夜書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

腐乱現場で見た「黒い海」の正体とは…。写真はイメージ ©getty

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「腐乱現場の清掃」は何度やっても慣れることはない

 僕が勤める会社では、ごみ屋敷の片づけや遺品整理、生前整理にお引っ越しまで様々な業務を請け負っている。

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 その業務の中には、何度やってもまったく慣れない、いや慣れたくないものがある。

「腐乱現場」だ。

 腐乱現場とは、部屋で一人で亡くなって、そのまま誰にも発見されずに長い間放置されていた現場のこと。

 この作業だけは本当に、何度やっても抵抗がある。

 遺体が発見される時期は、やはり夏場が多い。冬場は気温が低く、腐敗が進まないので発見されにくいが、夏場は腐敗のスピードが速く、異臭がすごいので発見にいたりやすいのだ。

 この異臭というのが、何とも形容し難い。脳と身体が拒否しているのがわかる臭いと言ったらいいのか。腐った生ごみの臭いでももちろんないし、糞尿の臭さとも違う。僕が初めて腐乱現場に入った時の感覚でいうと、人間のDNAに「良くない」と刷り込まれているような臭いというか、本能的な不快感が身体を襲うものだ。

 腐乱現場の片づけの依頼は、うちの会社の場合は不動産屋から来ることが多い。身寄りがない方で特に賃貸物件の場合、不動産屋が最終的な原状回復まで行うケースが多いからだ。

 手順としては発見次第、警察、消防を呼んでご遺体を運び出してもらい、専門業者に部屋を消毒してもらう。その後、僕たちにお片づけの依頼が来るという流れ。

 しかし、腐乱現場と言うと嫌がる回収業者も少なくないので、事実を隠して依頼してくるタチの悪い不動産会社も存在するのだ。

 このパターンが一番ヤバイ。「ダマ腐乱」と僕は呼んでいる。

 実際にあったダマ腐乱の話をしたい。

知らされないまま…

 不動産屋から賃貸一軒家の残置物撤去(片づけていない部屋を空っぽにする)の依頼が来た。

 見積もりは写真でとのことだったので、ざっくりと二トンロングトラック三台分くらいと見積もった。

 何も知らされないまま乗り込んだ現場までのトラックで、社員が「今日はごみ屋敷~」と言ったので、また当日サプライズごみ屋敷かと「勘弁してくださいよー!」とリアクションを入れると、「……ではありません!」と平成のクイズバラエティの手法を使ってきた。手を替え品を替え、僕らにサプライズを仕掛けてくる社員に感謝だ。とにかく、ごみ屋敷ではなく「普通」の一軒家丸ごと片づけだということがわかり安心していた。

 現場には、別の社員が先に到着していた。

 トラックの中から見ていても、身振り手振りで、その社員が怒り狂っているのがわかった。トラックから降り「どうしたんですか?」と聞くと、「先に現場を見てきたんですけど、まじで有り得ない。現場に行ってみてください!」と怒り暴れている。