「不動産屋、消毒すら入れてないぞコレ!」…フローリングには体液は散乱し、しつこい腐乱臭も。あまりにもヒドい「腐乱現場の清掃実態」とは? 12年間ごみ清掃員として働いたお笑い芸人・柴田賢佑氏による『ごみ屋敷ワンダーランド ~清掃員が出会ったワケあり住人たち~』(白夜書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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清掃会社の社員がキレた理由
この光景を見て社員がキレた。
「ふざけんな!」
確かにすごい光景だが、すでに腐乱現場とわかっている今、そこまでキレることなのか? と不思議がっていると、社員が「不動産屋、消毒すら入れてないぞコレ!」と続けた。
下をよく見ると、無数のバルサン。不動産屋が、警察と消防の後に本来入れるはずの消毒業者すらも入れずに、バルサンをたいただけで僕らの会社に依頼したらしい。消毒業者を入れていれば、腐乱臭は多少抑えられる。
どうりで、とんでもない臭いだったのだと納得した。とは言えこうなると、ご遺体のあった場所の清掃はされていないということになる。
ゾッとした。僕は初めての体験だったが、社員の面々は何度か経験していたらしい。
社員の一人が腐乱臭の強い方へ足を進めた。廊下を過ぎ、リビングの方へ入っていく。
まもなくして、「バイトの皆さんはこっちに入らないでください!!」と怒号にも似た指示が飛んできた。どうやら、リビングで亡くなっていたようだ。社員が全員、リビングに向かう。
「うわ!!」という声が聞こえる。
バイトに見せられる光景ではなかったのか、リビングは社員だけで清掃することになった。
生前の住人を感じるもの
まず指示されたのが、家の中にあるバスタオルと布団を持ってくること。洗面所で見つけたバスタオルと、二階でかきあつめた布団を、リビングに持っていった。
渡す時に、ドアの隙間からリビングを覗いた。
フローリングの一部だけが黒く変色し、液体のような物でヌメっている。
「そこか」と思うと、少し吐きそうになった。その日の終わりに聞いた話だが、床でヌメっていた液体は体液で、髪の毛がくっついた頭皮のような物も現場にあったらしい。
社員たちがその液体を大量のバスタオルで拭き、布団で包み、何重にもしたごみ袋に入れ、庭に出す。僕はリビングから出てくるごみ袋を庭に運ぶだけだが、真夏なのに鳥肌が立っていた。
リビングは社員たちに任せ、僕はリビングとふすま一枚で仕切られた隣の和室の物を梱包することに。その社員たちはさすがにキツいのだろう、休憩をこまめに取りながら作業しているので、リビングに誰もいない時間ができる。
隣の和室で作業していると、どうしてもリビングが気になるのだ。隣で人が亡くなったんだよなと思うと、意識が隣の部屋に行ってしまう。
休憩から戻った社員がリビングで作業を再開すると、隣の部屋にいる僕は「あれ? 休憩中だよね。何か物音してる。え?」と、少しの物音で血の気が引く思いがする。