アルコール依存症
中川さんはアルコール依存症だった。
「19歳とか20歳とかの頃にはもう、飲酒しては当時のパートナーに暴言を吐いたり物にあたったりしていました。長兄がすぐに身体的暴力に訴える人間だったので、自分は絶対にそうならないと決めていましたが、精神的、経済的、社会的、性的……。結局身体的な暴力以外は全部やっていましたね……」
実は、中川さんは自分で自分のアルコール依存症に気付き、結婚から約1年後にアルコール依存症を治療する目的で、心療内科のカウンセリングに通い始めていた。だが、全く良くなる兆しがなかった。
一方で、妻の休職後、今後の生き方についてアドバイスするうちに、中川さんは妻の芸術的なセンスや才能に気づく。
「妻が作ったコンセプトやアイディアを見て、『これ絶対いける!』と確信を持ってSNSやサイトを作り、販売チャンネルや製造チャンネルを勝手に用意して商品化したところ、1個1万円と決して安くない商品だったにも関わらず、飛ぶように売れたんです」
妻の才能に感動を覚えた中川さんは、次々に妻にノルマを課す。
「まるでプロデューサーやステージママみたいになって、妻に『このSNSについて考えてきて』『その締め切りに合わせてこれをやって』なんて指示していたのですが、妻は全くやりたくない。興味がない。だから喧嘩になるんですよ」
2020年、28歳のクリスマスイブも大喧嘩になった。
「アルコールに関しては、自分でもおかしいし、やばいと気付いていたのになかなかやめられませんでした。飲みたくないのに飲んじゃうんです。でも、このクリスマスイブは、初めて『あれ?』って思いました。『この人、照れ隠しとかではなくて、本気で喜んでいないんだ?』って……。
妻のためを思ってプロジェクトにして、ビジネスにして、マーケティングもやって、お金も稼いで、良かれと思って応援しているのに、妻は泣いている。妻のためを思ってやってるのに、関係が悪くなっていく。せっかく楽しい予定があるのに、喧嘩になる度にキャンセルになる。これを僕は、シラフでやっていたんです」
「何かがおかしい」と気付いた中川さんは、雷に打たれたような衝撃を感じていた。