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「僕に失礼だろう」芸能人をカッコいいと言う妻に怒り狂って…“モラハラ夫”だった経験から語る、加害者の変わり方

「僕に失礼だろう」芸能人をカッコいいと言う妻に怒り狂って…“モラハラ夫”だった経験から語る、加害者の変わり方

中川瑛さんインタビュー #3

2024/07/13

genre : ニュース, 社会

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「あなたのために、よかれと思って」していたことが、妻への“加害”だったと気づいた中川瑛さん。妻との関係を改善した後に、かつての自分と同じ加害者が変わるための支援をする自助団体「G.A.D.H.A(ガドハ)」を立ち上げ、“モラハラ”加害者の変容を描いたコミック『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』(KADOKAWA)では、原作者を務めている。

 この記事はノンフィクションライター・旦木瑞穂さんの取材による、中川さんの半生と「トラウマ」、そして中川さんに起きた変化についてのインタビューだ。

 旦木さんは、自著『毒母は連鎖する~子どもを「所有物扱い」する母親たち~』(光文社新書)などの取材をするうちに「児童虐待やDV、ハラスメントなどが起こる背景に、加害者の過去のトラウマが影響しているのでは」と気づいたという。

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 親から負の影響を受けて育ち、自らも「毒親」となってしまう「トラウマの連鎖」こそが、現代を生きる人々の「生きづらさ」の大きな要因のひとつではないか。ここでは、そんな連鎖に打ち勝つように“加害者変容”に取り組む中川さんの転機と信念に迫る。(全3回の3回目/1回目2回目を読む)

中川瑛さん 本人提供

◆◆◆

「自分自身の幸せのために」変わる

 2020年、28歳のクリスマスイブにした、妻との大喧嘩をきっかけに、中川さんは「あなたのために」「よかれと思って」が加害だと気付いた。

 パソコンに向かい、「夫婦喧嘩 理由」「夫婦 カウンセリング」などを検索すると、ASDなどの発達障害、AC(アダルトチャイルド)、愛着障害、モラルハラスメント、カサンドラ症候群、パーソナリティ障害などさまざまなキーワードと出会った。

 まずはそうしたキーワードに関連する文献を片っ端から読み漁り、妻との関係改善を模索し、徐々に改善していった。「加害者変容理論」という考え方を構築し、モラハラ・DVなど「ケアの欠如」としての暴力を振るってしまう人の当事者団体であり、暴力ではなく「ケアをもって」人と関わることのできる人に学び変わるための自助団体である「G.A.D.H.A(Gathering Against Doing Harm Again)」を立ち上げた。

 中川さんが「G.A.D.H.A」を立ち上げた理由は、大きく分けて4つある。

・自分がしたことが加害なら、世の中には無自覚な被害者も加害者もたくさんいると思ったから

・援助者と被援助者ではなく、加害者同士という同じ立場で助け合うことで「他者をケアする側」の能力を身につける場が必要だと思ったから

・責任や償い、幸福といった観念を同じ土俵で捉える哲学的/思想的な立場を持った団体がなかったから

・一人で加害者変容をするのは、幸福観がひっくり返るような大ショックを受けるのでとても苦しく、一人でやり切るのは簡単ではないため、仲間と一緒にやる方が良いから

 中川さんは、自分自身の変容に役立った考え方を広く一般に共有し、「悪意のない加害者」が変容するきっかけを提供するために「G.A.D.H.A」を立ち上げたのだ。

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