東京都世田谷区でラーメン屋「麺ジャラスK」の店主を務める、プロレスラーの川田利明さん。10年続く店はたった1割といわれるラーメン業界で生き残り、今年で14年目を迎える。
そんな川田さんは「ラーメン屋は絶対にやらないほうがいい」と言うほど、苦労を味わったという。いったい彼は、ラーメン屋店主としてどれほど過酷な経験をしたのか――。ここでは、著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島SUGOI文庫)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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ルールをつくらざるを得なくなった理由
「必ず最初にラーメンを人数分、注文してください」
これはひとつの例なんだけど、ウチの自動券売機にはさまざまな注意書きがベタベタと貼りつけてある。
これまでも、俺はいろんな「ハウスルール」をつくってきた。その度に「食べるものぐらい客に決めさせろ!」「どうして店にいちいち指示されなくちゃいけないんだ!」とネットなんかで叩かれまくった。たしかにそんなルール、つくらないのに越したことはない。でも、そうせざるを得なくなった理由はたくさんある。
冒頭に掲げた「必ず最初にラーメンを人数分、注文してください」というルールは、つまるところ、お客さんへの提供時間をなるべく早くしたいからだ。
これは自分で店を始めてから学んだことだけど、ラーメンが好きな人たちって、店の前で1時間でも2時間でも平気で並べるのに、いざ店に入って席に座ると、不思議なもので、そこで待たされることに我慢できない人が多い。ほんの5分、10分の話なのに、とにかく早く出してほしいと願うのだ。長く並んだ分、お腹も空いてくるからすぐに食べたいんだろうね。その希望がわかったので、じゃあ、なんとかしてお客さんに早くラーメンを提供しよう、と考えるようになった。