牛尾 本当にそう思います。僕は日本にいるときエンジニアとしてさっぱり使い物にならなくて、「牛尾さんコンサルとかプロダクトマネージャーなら才能あるからそっちをやればいいのに」とよく言われていました。マイクロソフトに入れたのはエバンジェリスト枠での採用です。
でも子どもの頃からの夢が諦めきれなくて、ずっとプログラムの勉強を続けるなかで今のチームへの異動がかなったわけですが、アメリカに来て思ったのが、安川さんがおっしゃるように、意外に「脳の差」ってそこまでないなということ。もちろんスーパーできる人は沢山いますし、隣の席のポールなんてもう意味不明なくらい優秀ですが、話すと別に追いつけないほど頭の回転が速いわけではない。彼らの思考法とかやり方を真似ればかなりの程度まで近づけるという実感があります。
改めてお聞きすると、安川さんが勉強法の本を書くに至った人生のきっかけは何だったんですか?
安川 学生の頃から、「勉強以外のこともしたい」という気持ちがすごく強かったんですよ。高校ではラグビーをやっていたし、お笑いにも取り組んでいたし、恋愛だってしたい(笑)。やりたいことがいろいろあったから、「いかに少ない時間で効果的に勉強するか」に強い興味があったんです。
勉強は、自分自身や人生を変える一番手っ取り早い手段です。すごく重要なことなのに、その方法自体はあまり深く議論されていない。学術的な研究もなされてある程度ノウハウも蓄積されているのに、科学的なエビデンスがあまり認知されていないことに問題意識をもったのが執筆のきっかけです。
《安川流》最高の「アクティブリコール」法!
牛尾 どんなことに取り組むにせよ、勉強の効率って人生で一番重要なことですよね。新しいことを始めるときに必ず学んで記憶をするわけで、これはどんな人にとっても必要なこと。そこで学んだスキルの積み重ねがマネーになるわけで、ある意味、勉強は一番レバレッジの効く、お金を稼ぐための技能ともいえます。
とくに安川流「アクティブリコール」は効き目がすごい! アクティブリコール(想起練習)という方法自体は以前から知っていたのですが、安川さんのメソッドは解像度とエビデンスが桁違いで、このやり方をもっと前に知っておきたかったと心から思いました。
安川 執筆にあたっては、40冊以上勉強法の本を読んで、100以上の論文を読んでリサーチしました。もちろんアクティブリコールについては各所で書かれています。でもわりと伝わりにくかったり、具体的な実践方法が書かれていなかったりしたので、「わかりやすさと実践しやすさ」を意識して本を書きました。
具体的には、英単語でも教科書でもなんでもいい――まず覚えたい情報を読んだら、そのあと白い紙に覚えたい情報をできるだけ書き出すだけ。
このとき「元の情報を見ないで」がんばって記憶から引き出して書くのがポイントで、とくに難しい内容のときは声に出しながら書くと効果倍増! さまざまな研究で、「なにもヒントのない状態で」読んだ情報を思い出す学生のほうが記憶の定着がよいことや、白紙に覚えたことをできるだけ書き出すほうが最終的に多くのことを記憶していることが証明されています。とてもシンプルですが、僕が実践してきた、科学的にも根拠のあるアクティブリコール法です。