牛尾 僕はADHDだから人より短期記憶が弱いんですが、実際この方法は白紙を使うとすごく覚えやすかったですね。
安川 よく、どうやってこの方法を編み出したのかと取材で聞かれるんですが、医学部に入って覚えないといけない知識が膨大な量になる中で始めていたんです。たとえば解剖学では筋肉の名前や神経の走行など膨大な項目をすべて覚えなくてはなりません。解剖学の試験は、慶応の医学部では約半数が落ちる試験です。春休みの直後にその試験があり、本来ならばその休みをしっかり使って勉強した方が良いのですが、僕は折角の休みにどうしてもインドに行きたかった(笑)。
そこで、解剖学の教科書の大事なページだけ最小限のコピーを持って、短い隙間時間に白い紙に書き出しながら旅をしたんです。そしたら帰国直後に受けた試験で余裕をもって合格することができたというわけです。
アメリカの医学生がみんな使うアプリ「Anki」
牛尾 本当にすごいなぁ。あとちょっとお聞きしたかったのが、僕は本が好きで沢山読むんですが、1週間経つと内容をけっこう忘れてしまっているのが悩みで……。
安川 それが普通だと思います。一度読んだだけだと、忘れてしまうことは多い。本を読むときに僕がやることがある対策は、「Anki」というアプリに、本を読みながら覚えたい情報を質問形式でどんどん書き込むことです。このアプリ、アメリカの医学生ならほとんどの人が使っているスグレモノで、膨大な知識の習得に役立ちます。ようは読書に関してもアクティブリコールと分散学習を自分の生活に一番取り込みやすいかたちでアレンジしてやるといいと思います。
牛尾 なるほど。あと反復学習に関しても質問があるんですけど、忘却曲線にそって何日かおきに勉強をうながすお勉強アプリがいくつか出ていますが、僕がやると“復習地獄”になって困るんです。
例えばある日すごく頑張って勉強してアプリに覚えたい内容を入れるとします。すると翌日や数日後に復習がやってきて、そしたら前回勉強したのと同じくらいの時間がかかってしまって。先に進んで勉強したいのに、このジレンマはどうしたらいいんでしょうか?
勉強は“2歩進んで1歩下がる”イメージで
安川 たぶん学ぶ内容や難度、その方面に関して自分がもともと持っている知識量によって、いつどのくらい反復したらいいのかは相当変わってきます。難しいものであれば、最初のうちは、1日後、3日後、1週間後という枠にとらわれず、結構頻繁に復習したほうがいいと思います。
勉強をしているとどんどん先に進みたくなるものですが、牛尾さんがご著書の中で「どんな人も理解には時間がかかる」と書かれているように、反復して理解に時間をかけるのは非常に大事なプロセス。“2歩進んで1歩下がる”イメージで勉強はやるのがいいと思っています。
牛尾 なるほど、それは非常によい考え方を聞きました!