新著『科学的根拠に基づく最高の勉強法』が8万部を突破する米フロリダ州在住の総合内科医・安川康介さんと、『世界一流エンジニアの思考法』が9万部に迫る米マイクロソフト現役エンジニアの牛尾剛さんの初対談が実現。アメリカの最前線で働く二人が効率のいい「学び方」について語り合った。

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安川康介氏 撮影・杉山拓也(文藝春秋)

勉強のやり方によって仕事はブーストできる

牛尾 今日は安川さんのファンの僕がお願いをして対談イベントが実現し、大変うれしく思います。僕はシアトルから繋いでいますが、ちょうど一時帰国されている安川さんは都内の主催書店からの配信です。まず、簡単な自己紹介から始めましょうか。

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安川 今回はお声がけいただきありがとうございます。僕はいま南フロリダ大学医学部助教の立場で、がん患者さんを中心に診療する内科医ならびに感染症の専門医として働いています。医者になるまで、そして医者になってからも相当勉強に時間を費やしてきたので(笑)、どうやったら効率よく学べるのか?についても考え調べてきました。数多くの研究と自分の経験をもとに『科学的根拠に基づく最高の勉強法』という本を執筆しました。

牛尾 新著、本当に最高でした! 人生で最も大切な問題が解決する驚きの一冊で、読んですぐ本の感動をnoteに書いたほどです(笑)。

 僕はいまシアトル在住で、マイクロソフトのクラウドサービスの開発をしているのですが、一流の人たちばかりのドリームチームでなぜ三流の自分がやれているかというと、「勉強の工夫」をしてきたからです。ADHDの僕は短期記憶が最悪で、よく物忘れするし、集中力が低いし、子どもの頃からなにをやっても要領が悪かったんですね。

 そんな自分でも、勉強のやり方によって仕事をブーストできて、人並みのことができるようになった。だから勉強のメソッドは大好物で、以前から安川さんのYouTubeはすごいなと思って拝見していたのですが、こうして本の形でも読めてすごく嬉しいです。

安川 ありがとうございます。僕も、牛尾さんの本を大変面白く拝読させていただきました。まず一番に感じたのが、牛尾さんと私は、すごく似ているなということ。牛尾さんはご自身を三流だと思われていて、一流の思考法やマインドセットを学ぶことが大事だったと書かれています。僕も自分は凡庸な脳みそを持っているにも関わらず、なんとかここまでやってこれたのは、勉強法がよかったおかげだと考えています。

「人間の脳の力にそんなに違いがあるわけがない」

牛尾 安川さんは圧倒的に「できる人」という印象なのですが、そうなんですね?

牛尾剛氏

安川 誰でも実践できる勉強法や思考法をみんなに知ってほしいという思いが我々には共通してますよね(笑)。牛尾さんの本でとても共感したのは、「人間の脳の力にそんなに違いがあるわけがない」という指摘。もちろん僕の周りで飛び抜けて優秀な人もいるんですけど、人の記憶のメカニズムや生物学的なつくりはみな一緒ですからね。

 いまの時代、脳の機能の「個人差の問題」がよく強調されますが、僕は遺伝的要素以上に、「脳の使い方」「勉強の仕方」「マインドセット」こそ各人のパフォーマンスに影響を与えると見ています。