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――それは酷すぎますね。

かりんこ そしたら、運悪くTVデッキの角に頭をぶつけてしまって。突然“ぐるん”と視界が回って。一瞬何が起きたのか理解できなかったですね。脳震盪を起こしていたようで、10秒程度ですが、意識も失っていました。頭の後ろ側が切れて、血も出てしまいましたし。

 でも、そんな私を見た彼は、心配をするどころか「そんな倒れ方をするお前が悪い」と言い放ったんです。その言葉を聞いて、私もついカッとなってタックルをしたのですが、160cmもない私の力じゃ、大柄な彼には全く刃が立たなくて。歯向かってきた私にさらに腹を立てた彼は、近くにあったフォークを握りしめて、私の顔の前に向けてきました。

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(『メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話』より)

――それを鼻に刺してきたのですか?

かりんこ 結果的には。でも、最初は刺すつもりじゃなかったと思うんですよ。お互いに冷静じゃなかったし、私は怪我もしていたから、「とりあえず今日は帰る」と彼に言ったんです。でも、「別れるつもりだろ」「帰るなら刺してやる」とフォークを近づけて脅してきて。そのときの血走った目をした彼の顔は、今でも覚えています。

 で、脅しのつもりだったのが、勢い余って私の鼻に刺さってしまって。「俺は寸止めしようと思ったのに」「お前がそんな場所にいるから悪いんだ」と、そのときも彼は言い訳をしながら私を責め続けていましたね。

ヤバい相手だと思いつつ別れられなかった理由

――それまでにも、喧嘩になったときに危害を加えられることはあったのでしょうか。

かりんこ 直接手を出されたのは、そのときが初めてです。でも、カッとなって物を投げてくることはありましたね。私も「このまま付き合っていたらやばいな」とは気づいていたんです。でも、なかなか別れられなくて。

――なぜ、別れられなかったのでしょうか。

かりんこ 彼ピッピの前に付き合っていた人に別れ話を持ちかけたとき、大きくこじれた経験があるんですよ。その人もいわゆる「メンヘラ」で、束縛が激しくて。私が別れを切り出したら、「僕は別れたくないけど、かりんこちゃんがどうしても別れたいって言うなら死ぬしかない」と言って、リストカットをした写真や、練炭やロープを準備している画像が送られてきたんです。

 私をつなぎとめるための脅しだということは、分かっているんですよ。でも、「万が一本当に命を断ったら、間接的だとしても、私が殺したことになるのかな」と思うと怖くて、それ以上「別れたい」なんて言えませんでした。

 

 結局、しばらくして彼のほうから「別に好きな人が出来た」と言って別れを切り出してきました。今ならもっとうまいやり方があっただろうなと思えるのですが、当時の私はまだ若くて、「とにかく彼を刺激しないように」と耐えることしかできませんでした。だから、彼ピッピのことも「おかしいな」と思いつつ、なかなか別れを切り出せなかったんです。

撮影=石川啓次/文藝春秋