2023年7月、初の著書『メンヘラ製造機だった私が鼻にフォークを刺された話』(KADOKAWA)を上梓した漫画家の前田シェリーかりんこさん。

 以前からInstagramに子育てや自身の体験を綴ったコミックエッセイを投稿していたところ、感情の浮き沈みが激しい、いわゆる“メンヘラ”の元恋人「彼ピッピ」にフォークで鼻を刺されて警察沙汰になった話がバズり、書籍化となった。

 フォークで鼻を刺された彼女は、事件後しばらく、記憶障害に悩まされたという。いったい、どんな症状があったのか。彼女の記憶障害が改善したきっかけとは――。(全3回の2回目/3回目に続く)

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前田シェリーかりんこさん ©石川啓次/文藝春秋

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元カレは号泣しながら「お前のせいだ」と私を責めた

――かりんこさんは、元恋人に鼻をフォークで刺された、という衝撃的な経験をお持ちです。前編では、刺されるまでの経緯をお話しいただきましたが、刺された後のことも詳しくお話しいただけますか。

前田シェリーかりんこさん(以下、かりんこ) 前編でもお話ししたように、元カレの“彼ピッピ”は、普段は自立した大人の男性でした。仕事ではどんなトラブルにも冷静に対応してきているのを見ていました。

 でも、頭から血を流して鼻にフォークが刺さっている、明らかに重傷な私を見たときの彼は、号泣しながら「お前のせいだ」と私を責めて、おどおどしているだけでした。「とりあえずソファに座って、落ち着いて話そう」とか言ってきたんですよ。もうその時点で全然冷静じゃないですよね。

――ちなみに、鼻にフォークを刺された痛みはどうだったのでしょうか。

かりんこ 違和感はあるんだけど、痛いとは思わなかったですね。たとえるなら、長めのトッポギを鼻に押し込まれたみたいな感じでした。怒りと驚きで、アドレナリンが大量に出ていたのかもしれません。あとは、(彼ピッピに突き飛ばされて)頭を強く打っていたので、感覚も麻痺していたのだと思います。

 ただ、鼻にフォークを刺された瞬間の光景は今でも覚えています。ドスッと勢いよくフォークが突き刺さったのと同時に、真っ赤な血がプチッと弾け飛ぶのが見えたんですよ。