リンの夢は、家族を一歩、また一歩と前に進ませていた。2022年春には店名を『ハオ・グェン』と、夫婦の名前を冠した屋号に改めた。そこに私は、潰えた“最後の望み”を悲観することなくリンと共に生きる遺族の決意を見るのだ。
その後の被害者家族
2024年4月5日、ポータルサイト「CHANTO WEB」がリンの家族の近況を伝えた。
「【独自】リンちゃん殺害事件から7年 母親が初めて語る残された家族のその後『弟は夕方になると玄関で姉の帰りを待っていた』」と題された配信記事によると、松戸市に開いたベトナム料理店はコロナ禍のなか経営不振に陥り閉店。
その後、福島県二本松市の温泉街で売りに出されていた元旅館を買い取り、2023年6月、新たにベトナム料理のレストランをオープンさせたのだという。この地を選んだのは、東日本大震災による津波と放射能で、ある日突然平穏な日常を奪われた人々と、愛娘を亡くした自分たちの境遇が似通っていると感じたからだそうだ。
現在は、旅館の宴会場を利用してレストランを営む傍ら、旅館の営業自体も再開すべく、客室の改装工事を9割ほど終え、営業許可が下りるのを待っているという。宿はベトナムから装飾品なども取り寄せ、ベトナムのテイストと日本の文化や特徴を合わせた温泉旅館になる予定らしい。また、リンの両親は彼女が亡くなった後、2人の子供を授かり、現在次女が6歳、次男が3歳。
事件当時3歳だったリンの弟(長男)は10歳となり、地元の小学校に通っているそうだ。事件からすでに7年が経過したが、両親の悲しみはいまだ消えず、リンの思い出が詰まった松戸市の家はそのまま残しているという。