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 ここ数年、中国の景気が急激に悪くなっている、という話自体は日本にも伝わってきている。ただ、それが若者の労働環境にどのような変化を引き起こしているのか、その詳細まではなかなか見えてこないところもある。

 中国における2016年の大学院受験者数は177万人だった。それが、2019年には290万人、そして、2023年には474万人に達している。国家公務員試験受験者数も同様で、2009年には初めて100万人を超え、2024年採用の試験には303万人が出願した。山西省出身のCさん(男性・24歳)も民間企業志望者が大学院進学・公務員志望に流れてきているのを実感していた。

「ここ数年、民間企業では仕事が見つからない。だから、多くの人が大学院進学や公務員を目指すようになりましたね。ただ、その試験が難しすぎる。だから、私は来日しました。

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 多くの人が仕事を見つけられない。民間企業だったら明日クビになるかもしれない。安定を求めて大学院や公務員試験を受ける人が増えていますね。でも、簡単には合格できない。周りのみんなも頑張っているから、自分が何もやらないと焦る。私も先のことは考えず、とにかく修士号をとろうと思っています」

「中国での就職は難しい。でもニッポンでは仕事が簡単に見つかる」

 一人っ子政策の影響もあり、両親は学費を出してくれる。Cさんの周りにも、月20万~50万円程度の仕送りをもらっている者は多い。たが、いつまでも両親に頼ることはできない。老いた両親を支えるのも「一人っ子」だ。

「私は日本語力にだけは自信があります。中国に戻っての就職は難しそうですが、日本では働き手不足の問題がここ数年でも話題になっています。例えばIT関係の仕事は日本語がしっかりできれば、中国より簡単に見つかるでしょう。中国のIT業界では、35歳を過ぎると仕事が見つからなくなる。若くて知識吸収力と体力があるほうが使い勝手がよい。でも、日本では年をとっていても、使えるだけ使おうとしている。それだけ人が足りなくなっている。なので日本で就職したいです」

 親世代より豊かになったが、自国の今後には何の光も見いだせない。彼らにとっては、少子高齢化・人口減少と国際社会における地位低下の中で、薄暗い夜道を歩き続ける日本のほうが、まだ明るいのだろうか。

撮影 卜新哲/東京大学開沼博研究室