永作のキャリアのターニングポイントとなったのが、23歳で出演したドラマ『陽のあたる場所』(フジテレビ系)。
永作の本格女優デビュー作だが、元暴走族で前科一犯の恋人(松田圭司)の社会更生に尽くすホステスというヘビーな役柄。結局恋人は警官隊に射殺され、後追い自殺をはかるが……というデビュー作とは思えない難役を熱演して高い評価を得た。
その後ドラマに主演することもあったが、実は明確な代表作はない時期がしばらく続いた。そんな永作が“魔性の女”に覚醒したのが、37歳で出演した映画『人のセックスを笑うな』。
芥川賞候補にもなった山崎ナオコーラの小説の映画化で、永作は20歳下の恋人を翻弄する39歳の美術学校の講師役。これがじつに自然体のはまり役だった。
「松山君が服を脱ぐことを、本当に嫌がっていたんです」
当時22歳だった松山ケンイチと繰り返し濃密なラブシーンを繰り広げ、アトリエで松山の服を脱がせていくシーンは自然なエロスに満ちている。恥ずかしがる松山をからかうように笑う永作の表情はまさに小悪魔。
服を脱ぐ途中で永作が叫ぶ「おー、イエス!」というセリフは完全なアドリブだったという。それについて永作は、公開当時こう語っている。
「松山君が服を脱ぐことを、本当に嫌がっていたんです。ためらっていたし、恥ずかしかったと思います。大勢の前ですからね。周りからは『ユリのオニ!』とか言われちゃって(笑)。なので、ユリがちょっと上に立って、テンションを上げていかなきゃ!ってことからのアドリブなんです」
初めてのキスシーンでも、立ち尽くす松山を、両目を見開いて品定めするように見つめ、何度も音を立てて唇を重ねる。このときのしめり気を含んだ“音”がなんともエロティック。
全編を通して露出はさほどでもないが、彼女の完全リードで進み、下着姿で裸の松山と体を重ね合わせ、互いに愛撫する濡れ場はリアリティに溢れている。
ベビーフェイスとのギャップもあいまって40歳手前ながら永作は一気にセクシーな役に開眼していく。
前年に出演した映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』で、ブルーリボン賞助演女優賞など6つの賞を獲得しており、『人のセックスを笑うな』と合わせて遅れてきた大ブレイクを果たした。