「小池百合子さんは“イメージ戦略”においても、都知事選で他を圧倒していました」
そう語るのは、印象戦略コンサルタント・神戸情報大学院大学客員准教授の乳原佳代氏だ。1960年のアメリカ大統領選挙でケネディーがニクソンを破ったのも、「テレビ映り」と「若々しさ」を強く打ち出したイメージ戦略ゆえだという。
“選挙に強い小池”はいかにして作られたのか。蓮舫氏、石丸伸二氏に欠けていたものは何だったのか。「色」やスカーフに込められた小池氏の「嫌われない」技術とは。
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東京は「小池百合子のイメージカラー」で溢れている
視覚情報として強く印象に残る「色」は、選挙においてものすごく重要です。皆さんご存知のとおり、小池さんのイメージカラーは緑。色彩心理学的にいえば、木々を連想させる爽やかな色味で、そのうえ主張しないため万人に好まれます。
しかしながら、都知事選ではこの緑がとても「雄弁」に働くのです。東京都のシンボルマークを思い浮かべてください。そう、緑ですね。小池さんは「東京都」そのもののイメージカラーを自身の色として起用しているのです。
私たち都民は、都の建物、広報、そして防災服に至るまで、「緑のマーク」に囲まれて暮らしています。それらや街の緑を見かけるたび、知らず知らず小池さんを連想しているとも言えるでしょう。しかも日常的に見慣れている色ですから、安心感をも覚えるのです。
米・プリンストン大学の研究によれば、選挙ポスターはわずか「0.1秒」で見る人に判断されるといいます。「小池百合子氏=緑」の方程式が根付いた都民からすれば、小池さんの緑のポスターは、他のどの候補者のものよりも瞬時に認識できます。都知事選開幕のずっと前から、私たちの日々の暮らしそのものに、小池さんの“イメージ戦略”が息づいていたのです。
石丸氏の「紫」は「不良」&婚活カラー?
今回、躍進した石丸伸二さんのイメージカラーは紫でした。緑と違って主張が激しく万人受けしないので、驚いたのが正直な感想です。しかし、やや濃度を薄めた藤色は、涼やかで高貴な印象に加えて、女性に性的な魅力を感じさせるともいわれ、婚活でも活躍する色です。女性票獲得に功を奏したと言えるのではないでしょうか。
一方で、石丸さんのチラシに使われていたビビッドな紫は「不良」を象徴する色です。「既存の政治を変える」という孤高な印象を後押ししており、都政に変化を求める若い世代を惹きつけた一因とも考えられます。