Aに「記念の写真を撮ろう」と言われ、マサミさんは夜、花火をしに近くの公園へ行った。公園は自宅から徒歩約7分の距離にある。
マサミさんがのちに母親にした証言内容によると、真っ暗なトイレに入るとAはマサミさんに、トイレの壁に「手をつくように」と言い、体を後ろから押さえつけた。「嫌だ」と言っても、Aはやめなかったという。このトイレは道路にも面し、車の通りもある。Aはマサミさんが着ていた高校の体操服や下着を下ろすと、無理やり性行為に及んだ。
「痛い、やめて」と抵抗しても「全然、聞き入れてくれなかった」
「痛い、やめて」と抵抗しても、Aは行為を続けたという。「全然、聞き入れてくれなかった」とマサミさんは振り返る。トイレの床に血が飛び散りショックを受けたが、マサミさんが自ら水を汲んで流した。その日から3日ほど出血が続き、腹部や局部に痛みを感じ、椅子に座るのが難しかった。
「どれだけ『嫌だ』と言っても聞いてくれませんでした。その瞬間、何を考えていたかはあまり覚えていません。嫌だけど、我慢しなきゃと思っていた気はします。当時からこれは被害だと思っていましたが、それを親に言う勇気はありませんでした。大学の推薦があったので、問題を起こすと推薦がもらえなくなると思い、卒業まで我慢するしかないと思っていました」(マサミ)
行為が終わりAから解放されたマサミさんは、帰宅後すぐにシャワーを浴び、自分の部屋へ直行した。そのため、マサミさんの異変に両親は気が付かなかったという。精神的なダメージを隠し切れなくなっていったのは、夏休みの終わりごろだった。
「娘はもともと元気な子で、なんでも話す親子関係でした。何かあれば、『ママ、ママ、聞いて』と言ってきたんですが、夏休みの終わりごろには、あからさまに口数が減って、落ち着きがなくなっていました。
勉強も毎日コツコツするタイプで、いつもダイニングで自分でやっていたので、私から『勉強しなさい』と言ったことは1回もありませんでした。1年生のときは成績も上位でした。そのマサミが、夏休みの終わりごろから、何も手につかない様子だったんです。学校でトラブルがあったのかと心配してはいましたが……」(母親)