2022年4月、愛知県東浦町の畑に全裸のまま埋められた門田典子さん(発見時40)が見つかった事件で、7月12日、名古屋地裁は住所不定無職の山下克己被告(56)に懲役28年を言い渡した。この事件では今年3月15日、共犯の天池由佳理被告に懲役16年の判決が下されている(現在控訴中)。
山下被告は天池被告を2回ほど買春し、そこから2人の関係が始まった。2022年1月のことである。その後、山下被告が「家に来いよ」と誘い、食事やトイレ、風呂を提供し、2人は車上生活しながら天池被告の買春客を探すという歪な生活が始まった。
そんな2人はなぜ門田さんを殺害したのか。事件の全容を辿る。
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天池の証言「典子が苦しんでいる声が聞こえてきて…」
山下被告は、門田典子さんを2回目(1回目の拉致では「無事に」自宅へ送り届けられた)に拉致した3月12日の経緯について、「天池がお金を貸したまま返してもらっていないと言うので、集金には付いて行ってあげるよと言った。ただし、『恨みがある』とか『仕返しがしたい』と言っていたので、犯罪になるようなことは協力できないと言った。門田さんが車に乗ってきてから、友人や知人に金策で連絡していることは知っていたが、それは2人がやっていたことなので分かりません。その話には一切入っていません」などと話した。
門田さんも4日ほど連れ回された後、「このまま帰せば警察に通報される」と口封じのために殺されることになった。天池被告は門田さんを殺害する最期の場面について次のように説明した。
「山下が典子に『ラクに死にたいか、苦しんで死にたいか』と尋ね、典子が『ラクに死にたい』と答えると、山下がビニール袋を渡しました。典子はそれを自分でかぶった。その後、自分で首を絞めようとしていましたが、『やっぱりヤダ、死にたくない』と言って足をバタバタさせていたので、私と山下でガムテープをちぎって首元に貼り付けた。
『このままだと空気が漏れる。オレがやった方がきれいに貼れる』と言って、山下が私の貼ったものを全部剥がして、初めからガムテープを巻き直した。山下がテープを巻くと密着して空気が漏れなくなり、典子は過呼吸みたいになりましたが、なかなか死ななかった。
すると、山下が『あれ取って』と言うので、運転席にあった延長コードを渡しました。『お前はいいって言うまで前を見とけ』『耳をふさいどけ』『周りを見とってくれ』と言うので、運転席と助手席の間に体を入れて前を見ていました。すると、典子が苦しんでいる声が聞こえてきた。食いしばっている感じの歯ぎしりや聞いたことがないような声も聞こえてきて、亡くなるのを認めるのが辛くて……、信じられなかった。
山下に『もういいよ』と言われて振り返ったら、典子が横たわっていて、ビニール袋も取り除かれ、延長コードもなかった。手首を取ると脈がなかった。心臓に手を置いたら鼓動がなかった。山下に『車を汚したくない』と言われて、典子のお尻の下にバスタオルを敷きました。人が亡くなったら、血と便と尿が出てくるので、汚されるのがイヤだという理由でした」