一緒にディナーショー

 でも実は、2人だけでディナーショーをやったことがあります。神奈川県の相模原でした。ところが、絡む場面がありません。お客さんは当然、僕がものまねをして淡谷先生からコテンパンにやられるところを観たいわけです。興行主も「ちょっとでいいから、お二人で話してください」とお願いしたんですが、先生は「それなら帰ります」。

 お考えはわかりませんが、馴れ合う姿を見せたくなかったのかもしれませんね。2回公演でしたけど、1回目のステージは僕が先にやって淡谷先生が後。2回目は「私が先にやる」とおっしゃったのは、早く帰りたかったんでしょう(笑)。

『ものまね王座決定戦』には、淡谷先生と僕の二人三脚みたいな面があったと思います。全員が笑っているままだったら、どんどんやり過ぎてしまい、ものまねというジャンルが飽きられて終わっていたかもしれません。厳しい淡谷先生が審査員にいて、初めて成り立っていたんです。お葬式に伺ってお別れをしながら、「淡谷先生との掛け合い漫才も終わったんだな」と感じました。先生が亡くなって、僕を𠮟って芸を磨いてくださる方もいなくなりました。

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清水アキラ氏

 昭和のテレビは、前例がないから全て手探りでした。ところが平成になる頃から、何をやってもパターンが見えてしまうようになった。みんなで面白いものを目指す時代を過ごせたことは、本当に幸せです。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています(淡谷のり子 あんた帰りなさい)。
 

「文藝春秋 電子版」では、大特集「昭和100年の100人 激動と復活編」を展開中。昭和の忘れがたい人物100人の「本当の姿」を、意外な著名人、親族が紹介しています。

 

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