集客力抜群の巨大アートセンターも
2位は、国立新美術館。
国内最大級の展示スペースを存分に活かして、大型企画展を続々と開催しており、こちらも集客力は圧倒的。2017年に日本で開催されたあらゆる美術展で、最も来場者を集めたのは、国立新美術館で開催された「ミュシャ展」だった。来場者は約66万人と、驚くべき数字を叩き出している。アニメ映画「君の名は。」の作中にも主人公のデートコースとして登場した美術館だ。
海外から名作を運んでくる大型企画展の受け皿として、ルノワール展、ダリ展、ジャコメッティ展……。美術史上のビッグネームの展覧会を続々と開催しているゆえ、話題と動員には事欠かないのだ。同時に、
「アジアの、そしてもちろん現代の日本を代表する表現者の作品を、広く紹介するのも使命です」
と元文化庁長官の青木保館長が話す通り、三宅一生、草間彌生、安藤忠雄らジャンルを超えて第一線で活躍する日本人アーティストの個展も、数多く企画されるのがうれしい。
5月7日までは「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」を開催中。モネ、ルノワール、セザンヌらの名品を堪能できる。人気の印象派の展覧会となれば、GWは大混雑しそう? たしかに。でもそこは巨大な展示空間を有する同館のこと。ゆとりを持った展示構成になっており、「絵がまったく観られない!」なんてことはなさそうだ。
六本木が「夜の街」から「アートの街」に
3位は21_21 DESIGN SIGHTとなった。東京ミッドタウンの敷地内に、シャープな外観の安藤忠雄建築が見えたら、そこが日本屈指のデザインミュージアムである。
三宅一生、佐藤卓、深澤直人、川上典李子とデザイン業界の重鎮をディレクターに据え、運営されている。アートとデザインは似て非なるもの。定義と区別は難しいところだけど、生活や実用との結びつきを、アートよりも強く意識した創作がデザインだといっていい。
なので同館で展開される展示も、観る側に納得と気づきをもたらしてくれるものが多い。現在は「写真都市展 ―ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち―」を開催中。20世紀の写真界を刷新したウィリアム・クラインの作品と、現代の日本とアジアで活動する写真家たちの作品を並列させてある。時代と洋の東西によって表現はどう変わるのか、または変わらないのか。実作を通して確認できるようになっている。
ここまでの上位3館は、いずれも東京・六本木の美術館だった。そう、六本木は今や、アートスポットが点在する文化の香り高き地区となった。ひと昔前は「夜の街」とのイメージが強かったのに、変われば変わるものである。
アートには、街の性格をがらりと変える力だってあるのだ。