盗んだのは約7000円と犯行後に囓ったリンゴ2個だけ…。2020年9月に死刑が確定した土屋和也死刑囚は、なぜ高齢者2人を包丁で刺して殺害したのか? 事件後の加害者や、その家族を追った高木瑞穂氏と、YouTubeを中心に活躍するドキュメンタリー班「日影のこえ」による新刊『事件の涙 犯罪加害者・被害者遺族の声なき声を拾い集めて』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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はよ、判決言えや。死刑だろうが!!
被告である自分は、あの日証言台の席でややうなだれていた。
(裁判長)「これより判決を言い渡す。被告人前へ」
それを聞いて証言台へ移動する。
「はよ、判決言えや。死刑だろうが!!」
そう心の中で叫んでいた。
(裁判長)「主文は後に回して罪となるべき事実、理由から先に述べる」
後方、傍聴席の記者がバタバタと急いで法廷内から外に出ていった。
「はい正解、予想どおり」
判決文を読み進める裁判長。それから一息吐いてこう言った。
(裁判長)「被告人起立しなさい。主文を言い渡します」
「下手なドラマでもこんな演出しねぇぞ」
(裁判長)「主文。被告人を死刑に処する」
「はいはい、茶番、茶番。はじめから死刑って言えや。後からペタペタと理由を補完する様な文体にすんな」(一部要約、土屋和也死刑囚の手記より)
これは、2014年11月から12月にかけ2人を殺害したとして死刑判決を下された土屋和也(当時26歳)の述懐である。発言者が明記されていない箇所は彼の、当時の心情だ。
和也は当初の手記ではこう息巻いたが、のちに彼が綴った手記と照らし合わせると、それが咄嗟に出た“空いばり”だとわかる。自分は根っからのシリアルキラー(連続殺人犯)じゃない。悪いのは母親をはじめ、世間だ。そんなやりきれない思いが感じ取れるのだ。
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自分にとっての転機は、良くも悪くも4歳から15歳まで過ごした児童福祉施設です。それが一番影響が大きい。年を重ねる度、自分に対しての自信、期待、夢が薄れていきました。俺。虚勢だった。体調は普通…時々、昔の仕打ちや行動を思い返しては悔やんだり、頭に来たり、非のない人などに八つ当たりしたことを反省しています。人生やり直したいけど、またあんな思いをするのは……。
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群馬県前橋市。どの地方都市にもある長閑な住宅街で事件は起こった。2014年11月10日午前3時頃、和也は当時93歳の女性宅に侵入し、女性をバールで殴り包丁で刺して殺害。現金約7000円を奪う。