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 1ヶ月後の12月16日午前3時半頃にも女性宅から約700メートル離れた81歳の男性宅に侵入し、午前11時50分頃、包丁で男性の首や左脇を刺して殺害。トイレから出てきた80歳の妻も切りつけて重傷を負わせた。8時間以上この家に潜んだあと、夫婦を襲ったのだ。盗んだのはリンゴ2個だけだった。

 逮捕の決め手は、現場に残されたリンゴだった。男性宅への侵入口になったとみられる、割られた出窓がある部屋に、芯の部分まで食べ切ったり、かじったりした状態のリンゴが複数残されていたのだ。

 付近の防犯カメラには事件後、和也とよく似た男が映り、現場に残されたリンゴに付着したDNA型と、彼の型とが一致した。俗に「前橋高齢者強盗殺人事件」と呼ばれる本事件は、カネ目当ての強盗殺人と報じられたが、その犯行目的と残忍な犯行の整合性が取れず、物証となるリンゴをわざわざ血まみれの現場に残したことも含めて、不可解な点の多い事件とされた。

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 和也の自宅を捜索すると、室内はカップ麺やペットボトルなどのゴミで散らかり、電気は止められ、生活が苦しかった様子が垣間見られたという。

2人を殺して得たものは「7000円とリンゴ2個」

 警察での取り調べに対して「家に入ったら人がいたので、刺した」「借金があり生活に困っていた」などと供述した和也は、高齢者2人を強盗目的で殺害し、1人に重傷を負わせたとして一審で死刑判決を受ける。続く二審でも控訴は棄却。最高裁に上告するも判決は覆らず2020年9月8日、死刑が確定した。

 私は一審での死刑判決直後の2016年8月から取材を始め、和也との面会を重ねた。

 きっかけは後先考えない和也の犯行と、異常なまでに多かった同情の声にあった。分別のある成人男性が起こした事件にしてはあまりにも短絡的すぎる。なにしろ人を2人も殺して得たものが現金約7000円とリンゴ2個だけなのだ。