「アカン」と言ったら全部やり直し...会長は競走馬オーナー、社長の趣味は生け花
「競走馬です。1億円を超える馬も購入しているが、成績はイマイチ。名前の『カズ』を冠して『ジャンカズマ』などと付けています」
現在、32頭の現役馬を所有するが、重賞勝利は1頭のみと、大ヒットは生み出せていないようだ。
“家長”である一雅氏を中心に、株、不動産、馬など実に1600億円を優に越す資産を所有している小林一族。別の元社員は、一雅氏の章浩氏への影響力をこう話す。
「紅麹問題で記者会見に出てきた章浩さんは金持ちケンカせずを地で行くボンボン。特に年上のベテラン社員には腰が低い。趣味はトライアスロンで、生け花をしていたこともある。その性格のせいなのか、いつまでたっても一雅さんの“独裁”が続いているのです」
社員にとっては会長となった一雅氏が院政を敷いていることは自明だった。
「一雅さんと章浩さんがそれぞれ子会社も含めて社内の全部署をまわって、現場の話を聞くワークショップを行っています。また、05年からは一雅さんが講師となり『K営塾』と称した幹部候補生育成も行っている」(同前)
毎年、選抜された12名の社員が、直接一雅氏の薫陶を受ける。その中から、執行役員などの重責を担う社員が生まれるのだという。
新商品を製品化するのにも、一雅氏の判断が重要だ。
「頭を絞って新製品の名前を考え、パッケージまで出来上がっていたのに、一雅さんが一言『アカン』と言ったら全部やり直しになったこともあった」(同前)
一方で、一雅氏は22年に出した自著『小林製薬 アイデアをヒットさせる経営』でおりもの専用シート「サラサーティ」(88年)を発売した時のエピソードを紹介している。当時、「おりもの」という言葉は使わない方が良いという女性社員の猛反発を受けたという。しかし、信念を貫いたことで、ヒット商品となったと自画自賛している。
「昔の一雅さんは新たな投資には慎重だった。ただ、CMで成功してしまい...」
信念を持って生んだはずの商品が大問題を引き起こしたことは、一度や二度ではない。過去の新聞記事などを調査すると、確認できただけでも1993年以降、実に31年間で17回も製品の回収を行っている。
「11年には、『天使の耳かき』が折れて一部が耳に残る事故が相次ぎ、220万個を回収している。18年に『のどぬーるスプレーキッズC』の有効ヨウ素量が承認規格を上回る可能性があることが分かり回収。昨年3月には『ケシミンクリームEXαb』も有効成分に問題があり回収。同9月にも『クレンジル』『アロエ製薬便秘錠』などを製造及び試験が適正に行われていなかったとして回収しています」(同前)
まるで自主回収の“常習犯”のようにも見えるがある元社員はこう弁明する。
「昔はウチの会社はすごく真面目だった。93年、『こんがり魚焼き石』という商品はたった2件、購入者から苦情があっただけで回収し、返金対応までしています」
数々の回収の裏には、同社の開発力に疑問を抱かせる“事件”もあった。