ジャーナリストの中原一歩氏が出版した『小山田圭吾 炎上の「嘘」』には、小山田氏が「人生で精神的に一番辛い期間だった」と語る“空白の5日間”が克明に描かれている。あの時、本当は何が起きていたのか、小山田氏本人に話を聞いた。

 東京オリンピックの開幕を4日後に控えた2021年7月19日、開会式の音楽を担当していた小山田圭吾氏が辞任を発表した。

 4日前の15日からインターネット上で、過去に音楽誌やサブカルチャー誌のインタビュー記事に掲載された学生時代のイジメについての発言をきっかけに炎上状態となり、小山田氏の所属事務所には殺害予告まで届く事態に――。

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©文藝春秋 撮影・三宅史郎

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――3年前の東京オリンピックで、開会式直前に小山田さんが辞任したのは本当に衝撃的でした。あの時、小山田さん自身には何が起きていたんでしょう。

小山田 開会式のスタッフとして名前が発表された次の日でした。僕は昼からバンドのリハーサルで家を出ようとしていたのですが、息子がスマホを見ながら「パパやばいよ、すごい炎上してる」と声をかけてきたんです。

「息子が中学生くらいの頃に『これ何?』と聞いてきたので」

――息子さんはどんな様子でしたか? 

小山田 息子は当時20歳で、音楽もやっているので割と友達のような関係なんですが、その時はとてもシリアスな雰囲気でした。普段ならそんなことは言ってこないし、わざわざ声をかけてくる時点で息子が事態を深刻に捉えていることはすぐわかりました。聞いた瞬間に僕も「あの雑誌の話だろうな」と察し、すごく不安な気持ちで家を出ました。

 

――炎上のきっかけになった「2つのインタビュー記事」について息子さんはすでに知っていたんですか?

小山田 息子が中学生くらいの頃に、ネットで雑誌のインタビューについてのブログか何かを見つけて「これ何?」と聞いてきたので、一度話をしたことがありました。