東京オリンピックの開幕を4日後に控えた2021年7月19日、開会式の音楽を担当する小山田圭吾氏が辞任を発表した。
4日前の15日からインターネット上で、過去に音楽誌やカルチャー誌のインタビュー記事に掲載された学生時代のイジメについての発言をきっかけに炎上状態となり、小山田氏の所属事務所には殺害予告まで届く事態に。
殺害予告は、オリンピック開会式の翌日だった。その日、小山田氏の家には家族とマネージャー、数人の友人が集まって「その時」を待ち構えていた。小山田氏は、その時何を考えていたのだろうか。
――声明文を出してから、辞任するまでの4日間は小山田さんにとってどんな時間でしたか。
小山田 仕事がある間はまだいいのですが、やることが無くなると際限なくオリンピックのことを考えてしまっていました。家族からSNSを見るのを禁止され、食欲もほとんどなく、あまり眠れていませんでした。
――辞任はどういう風に決断されたんでしょう。
小山田 結局、自分では決められませんでした。19日の朝、僕は何かしていないと頭がおかしくなりそうで、お風呂を掃除したりお皿を洗ったりずっと動き回っていました。その落ち着きがない様子を見て、パートナーが「限界です」とマネージャーに連絡をしてくれたんです。その後マネージャーから「もう辞めましょう」と言われました。後で、僕が死んでしまうと思ったと言われました。
「24日の15時に自宅で僕を襲うという予告が届いていたんです」
――辞めることに抵抗はありませんでしたか?
小山田 辞められるなら辞めたいとは思っていましたが、開会式の4日前に辞められるはずがないとも思っていました。でもマネージャーが運営委員会に電話をしたら、30分で辞任が認められました。
――思ったよりもあっさり。
小山田 そうですね。この時は少しほっとしました。ただその後に、2回目の殺害予告が届きました。
――殺害予告ですか。
小山田 開会式の翌日、24日の15時に自宅で僕を襲うという予告が届いていたんです。それもあって、何も終わった感じはしていませんでした。